第百十話 たまには純粋なハッピーエンドがあってもいいじゃない
俺はベッドの上で目を覚ます。そこは知らない天井だ。
「...こ、こは?」
ベッドの脇には、コゼットとルーナ、そしてリイがいる。コゼットとルーナは今にも泣きそうな顔をしている。ただ、リイはいつもの無表情だ。
「【主人公】さん、お目覚めになりましたか?」
「....はい、それでここは?」
「ここは、レイナンという街です。コゼットさんの計らいで宿を用意し、既に治癒魔術師による治療も大方すんでいます。全治までは、三日ほど要するそうです。」
「なるほど.....それで俺はどのくらい寝ていたんですか?」
「二日です」
「それは、足止めを食らわせてしまって申し訳ない」
「いえ、私たちもその間に休息をすることができましたので、お気になさらず」
「そうですか、コゼットさん、いろいろ手を尽くしていただいたようで....ありがとうございます」
俺がその言葉を言い終わるかどうかのタイミングでコゼットがワッと泣き出す、泣きながら地面に頭を擦り付けて謝罪する。ルーナもそれに釣られて同じく、言葉にならないレベルで泣きながら謝罪をしてくる。その姿を見て、彼女たちがまだただの子供であると言うことに気がついた。あの悪魔は、こんな少女たちをあんな目に合わせたのだ。俺の方こそ、ここまで二人にした執拗なまでの尋問が急に大人気なく感じてしまった。
「あ、あの、その......とりあえず落ち着きましょう」
それから、五分ほどして彼女たちは、なんとか冷静さを取り戻し、再度謝罪をしてくる。
「この度は、私どもの愚かな嘘で、このような危機を招いてしまい、大変申し訳ありません」
「元はといえば全て私のせいです、申し訳ありません」
「お二人は被害者ですよ、それに俺がこんなに怪我をしたのは俺が弱かったからです。リイさんが戦っていればこのようなことにはなりませんでした」
「私がいかなる罰であっても受け入れますので.....ルーナは....」
「コゼット!!私が言う約束じゃない!!....【主人公】さん、どうか罰を与えるなら私に」
「様」が抜けてるぞ、従者がそれでいいのかよ.......。てか、俺のこと悪魔かなんかだと思ってるのかよ......あ、そういえば、最後はめちゃくちゃ暴力を全面に出して脅迫したんだっけ.....。ただ、こちらにはこちらの意思がある。
「その謝罪を受け入れるわけにはいきません」
二人はその言葉を聞いて、固まる。
「俺たちは、ただ雇い主であるあなた方の命令を遂行したに過ぎません。ですので、礼は不要です。ただし.....」
そう言って親指と人差し指で丸を作って彼女らに見せる。......悪いね、どんなに高潔ぶっても金は欲しいんだ。
そうして、ひとしきり今後の予定などを話し合い、コゼットとルーナは部屋へと戻っていく。