第百八話 剣豪伝説 Ⅴ
俺と【剣豪】は、馬車に揺られてロウサイ地方を彷徨っていた。目的は人虎だ。この辺のショウオとかいう地方都市で、そこの顔役のジジイがその人虎にぶっ殺されたらしい、という噂を聞いて、俺たちはショウオへと立ち寄った。関係者や獣狩りどもの話を聞く限り、その人虎の名はリイというらしい。虎で、しかもリイ....ね。人虎伝や山月記の李徴子を彷彿とさせるその奇妙な一致に俺は興味をそそられる。一応、あの剣術バカにもこのことを教えてやったが、興味なし。曰く「私が興味があるのはその獣人の強さだけ」だそうだ。だが、それでいい。難しいことは俺がやる。そんなこんなで聞き込みを続けると興味深い話を聞けた。それは、この街の盗品屋の店主から聞いた話だ。なんでも、そのリイは黒髪黒目で十代くらいのガキとつるんでいたらしい、それもアントニオをぶっ殺す数日前から突然。リイの出自を中国だと仮定すれば、同じアジア系.....何かあるかもしれない。それから、俺たちはその二人が殺したとされるポイズンボアの死体を見に行くことにする。その死体は腐敗が進んでいたが、かろうじてまだ、形を保っている。
「こりゃひでえや、頭部がぐちゃぐちゃだ」
「......ただ、単騎によるものではないな」
「ああ、一際でけーのも入れた三頭は、内部から破裂するようにして死んでるか力任せに引きちぎられて死んでる。残り二頭は.....なんだこりゃ、わかんねえな、どうやったらこんなにひしゃげるんだ」
「.........理を外れた強者が少なくとも二人、闘志が湧くというものだ」
「あーあ、勘弁してくれよ。俺は、お前と違って決闘だとかそういった観念的なものには興味ねえんだよ」
「........変わっているな」
【剣豪】はまるで信じられないといった表情でこちらを見る。
「てめーだよ、変わってんのは」
未知の技術を扱う強敵.....もしかしたら猿みてえな悪趣味な連中かもしれねえ。そうして、俺たちはそのリイの小僧の足跡を追うことにした
地理関係わかりにくくて申し訳ないのですが、
←西 東→
アレン別荘|ショウオ→コゼット別荘|旧セウント、女郎蜘蛛迷宮
| ロウサイ地方 |
という認識でお願いします。地図的にはコゼットの家があるあたりがちょうどロウサイ地方の端っこということです。
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