第百一話 合理的な信頼
私は今、二人の少女を抱えながら森を疾走しています。目的地は先ほどの谷から二里ほどの距離にある街です。そんな私へと、ルーナさんが問いかけます。
「なんで【主人公】さんを置いてきたんですか!!、いくら彼が強くてもあの悪魔相手では殺されるに決まってます!!」
私はそれへ答えます。
「彼が『抑える』とおっしゃったからです」
今度はそれを聞いたコゼットさんが私へと話しかける。
「お二人の間には家族の縁よりも強固な絆があるのですね」
「ええ、この世界で唯一信頼に足る相棒ですので」
私はこの時間さえも有効に活用するために彼女達に問いかけます。
「彼に関して、何かご存知なことはございませんか?どのような些細なことでも構いませんので」
私の問いを聞いたコゼットさんは、少しの間思索に耽る様子を見せられた後、口を開かれました。
「そういえば、アレンはつい一年ほど前までは平凡な実力しか持ち合わせていなかったと聞いたことがあります。ここ数ヶ月で急速に力をつけた、と」
私はその言葉を受け、先ほど彼に感じた違和感の正体を直感する。彼もまた、私たち同様、この世界の理から外れていたのだ。それも、歪んだ形で。
そうして、どの程度走ったかは定かではありませんが、森を抜け、街を取り囲む城壁が見えてきました。私は二人を門の近くでおろし、
「私は、【主人公】さんの元へ戻ります。お二人は、このまま街へと入り、宿で私たちの帰還をお待ちください」
そうして、再度地面を蹴る。私は胸中の不快な感覚を抑え込みながら必死で走る。