第百話 虐殺騎士アレン Ⅰ
ついにきました100話!!!!!
気合い入れて描きました
深い渓谷。そこに本来かかっているはずの橋は、すでに風化して崩れ落ちている。馬車での走行は不可能であろう。そんな俺たちの元へと悪魔がやってくる。その男は一見して普通の貴族階級の好青年であった。セミロングの銀髪に、よく手入れされた肌、整った顔立ち。まさに、イケメン。何より印象的なのは全身を包む高級ブランド服や小物だ。スーツに始まり、革靴やタイピンに至るまでその全てが悪趣味な輝きを放っている。そうして、服と同じかそれ以上に悪趣味な笑顔をその顔に貼り付けている。
「見つけたよダメじゃないか、コゼット嬢.....ルーナは僕のものだと言ったはずだぞ.....それになんだい?その見るからに下賤な男どもは?まさか、そんな下賤な獣狩りに頼って僕を倒せるとでも思っているのかい?もうダメだ。君たち二人にも、そこの獣どもにも罰を与える」
アレンはそんなことを言いながらも冷静に距離を取り、二本の剣を構えている。あの構えは即刀流のものだ。文字通り、素早く剣を動かすことに特化した流派だ。しかし、即刀流は剣を一本しか用いないはずだ。不明点は多いが唯一はっきりしていることがある。それは、この男は強いということだ。この世界の貴族の護衛騎士の実力は現代の冒険者換算でAランク以上だろう。そんな強者を複数相手取り、逆に重傷を負わせる。それが、何よりの証拠だ。それに、あの男が纏う空気....猿のものと似ている。「危険だ」「逃げろ」と俺の脳が全力で警鐘をならす。しかし、そうはいかない。あの男の狙いは、ルーナとコゼットだ。まずは彼女達の安全を確保する。
「リイさん!!ここは一旦俺が引き受けます。二人を抱えて、この先の街まで運んでください。リイさんの足なら可能なはずです」
「.....私が戻るまでその男を抑えられるのですか?二人で戦った方がよいのではありませんか?」
「....こいつは足手纏いを抱えて勝てる相手じゃないです!俺が必ず抑えます」
それを聞いたリイは何も言わずに二人を抱えると、谷を飛び越え、走り去る。まさに一瞬の早業であった。
「ふん、お仲間は君を見捨てて逃げたか、まあ、お前のような男では足止めにすらならん。仲間の獣人もろとも切り刻んでやる」
「逃げたわけではないよ、信頼だ。まあ、女の心一つ射止められないお前に、人の心などわかるはずもないか」
アレンは、それにプライドを刺激されたのか俺に切り掛かる。その剣筋は激情に支配されているとは思えないほど早かった。
その直後、本来ならば、鳴り響くはずの快音が聞こえない。なぜか?簡単だ。
..........反射に失敗した。