表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

109/380

第九十九話 履行

コゼットは涙を流しながら俺たちへと懇願する。もはや、その姿は気高い貴族でも、仮面を被った論客でもない、ただの友達思いの女の子だ。あとは、俺たちがどうするかだ。わざわざ考えるまでもない。俺の理想は決してこんな哀れな少女達を見捨てることを許さない。

「話の続きを聞かせてください。ただ、約束します。その秘密がなんであろうと、あなたとあなたの友人は俺たちが守ります。....もう大丈夫です、あとは任せてください」

俺は出来る限り優しい声色でそれを言った。リイもまた、異論はないと言わんばかりに頷く。

そうして彼女は語り始める。もはや、彼女のお礼の言葉は涙にかき消されて言葉としての体裁をなしていなかった。しかし、彼女は持ち直し、俺たちに真実を語り始める。

「追っ手の名はアレン。名門イーストウッド伯爵家の次男です。彼は気に入らない者は子供であっても平気で殺す人格破綻者です。彼は、かつて自分の服に偶然触れたという理由で当時11歳の少女を殺害しています。彼とは、三週間ほど前に、公務で訪れたベイトという街で出会いました。そこで、彼はルーナに一目惚れしてしまったのです。彼はまず私にルーナを譲ってくれと交渉してきました。当然、私は拒否します。そうすると彼は伯爵家としての権力を利用して私に圧力をかけます。しかし、私の家とて、彼の家格には及ばないものの名門です。そのおどしには屈しませんでした。最後に彼は暴力的な手段に出ました。ある日の夜更け、私どもが滞在する宿を単独で襲撃したのです。私どもと護衛騎士はなんとか応戦しつつ街から逃げ出しました。この時、当家の護衛騎士団はほとんど虫の息でした。.....あとは、あなた方もご存知の通りです。」

「お願いします!!私はどうなっても構いませんので!!ルーナだけでも、あの悪魔の魔の手から救ってやってください!!」

その時の俺たちはどんな顔をしていただろうか、絶句か軽蔑か。ただ、これだけは確かだ。俺たちは怒っていた。

「......お話はわかりました。アレンの手からあなた達を守り抜いて見せます」

「ありが、とうございま、す!」

コゼットはなおも泣いている。

「本当に、ありが、とうございます」

ルーナの方を見ると彼女もボロボロと大粒の涙を流している。リイはそんな二人のお礼の言葉を聞くと口を開く。

「それには及びません。私たちはただ金銭と引き換えにあなた方を護衛する、という契約を履行するだけです」

そう言うリイの腕は毛皮の上からでもわかるほど血管が浮き出ていた。

しかし、現実は無情にもまだ見ぬ追っ手へと味方をする。馬車の行く末には深い谷が俺たちをまるで追い返すかのように待ち構えていた。

いやー美しい友情っすね^ ^

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ