第九十六話 時計は0時をさしている
食事会という名の尋問を切り抜けた。私とその主人であるコゼットは二人部屋のベッドに腰掛けて話し合う。コゼットはこのような状況にあっても美しい。その、白磁のような肌と黒く美しい髪、その完璧なコントラストに差し色としての赤い瞳。まさに、絶世の美女とはこのような人間を指すのだろう。
「それにしても、あのお二方....こちらの想定よりも聡明でしたわね」
「ええ、特にリイさんの方は要注意でしょう」
私は先ほど、彼がコゼットの装飾品やドレスを褒めた際の言葉を反芻しながらそう口に出す。他にも、彼らがまるで赤子をあしらうかのように賊を蹂躙する姿や、【主人公】と名乗った男が衛兵に賄賂を渡す姿、こっそり彼を尾行した際に見た死んだバルジャン家の護衛騎士の鎧を着て、市場の商人に威張る姿、など私たちの常識では考えられない倫理観の欠如した振る舞いが次々と蘇ってくる。彼らは、荒野に迷い込んだ羊を噛み殺す「狼」なのだ。私は今にも破裂しそうな心を必死に押さえ込んで、コゼットの瞳を見据える。
やっぱりとっても綺麗........。
「その通りですわ、あのような洗練された言葉遣い、社交会でもなかなかお目にかかれませんわ。獣狩りなどではなく、文学の道に進めばよろしいのに」
「おっしゃる通りです」
「.........」
コゼットは私の返答を聞いて頬を膨らませる。
「どうなさいましたか?コゼット様」
「二人きりなのですから、敬語でなくても結構ですわ」
「そういうわけには....」
「これは命令ですわ」
「...わかったよ」
コゼットはこういう人間だ。そもそもいくら幼馴染といっても、貴族の娘が侍女と同じ部屋で眠るだなんて非常時であってもあり得ない。あの時、私たちが攫われた時も自身が侍女であると言い、自分を犯す代わりに私は見逃してほしいと賊に懇願した。まあ、無駄だったが。
「......ただ、彼らにはこちらの嘘は看破されているとみてまず間違いありませんわ」
「そうだね、ただ、彼らに本当のことを話して護衛の依頼を降りられでもしたら...私たちは終わりだよ」
「ええ、そのためにも真実だけは隠し通さなければなりませんわ」
「ただ、あの二人だって他の連中と違って温厚そうに見えるだけで中身は一緒だよ...もし隠し事がバレて怒らせでもしたら.....」
「心配する必要はなくってよ。私がなんとかしてみせますわ」
そんな彼女をみているとどうしようもない自己嫌悪に陥る。私たちの馬車が襲われるような事態になったのも彼女が一人であの二人の怪物と対峙する羽目になっているのも全部私のせいだからだ。
「コゼット、もう諦めようよ!私なら大丈夫だから!」
「それはなりませんわ。二人で帰るのです。だって、貴女も私も何も悪くないのですから」
そう言って彼女は私を抱きしめる。私は、いざという時は自分が犠牲になろうと心を決めて、彼女に抱擁を返す。
とりまコゼットの容姿はここで
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