第九十三話 世界の端とハシ
第3章はまだまだまだまだまだ続きます
俺は宿へと戻り、取り決め通りノックをする。
「リイさん、ただいま帰りました」
数瞬の沈黙の後、扉が開く。リイは俺を出迎える、その直後彼の鼻がピクリと動いた。
「【主人公】さん、買い出し感謝いたします。....この香りは...どこか懐かしい」
「ああ、これはお土産です」
と言って、俺は部屋に入りつつ焼売を見せる。それを見たリイに目は焼売に釘付けだ。
「あと、リイさんの服や当面の食料も買ってきました。それに、朗報です。俺の時代の金もある程度使えることが判明しました」
「なるほど....ありがとうございます」
「とりあえず、難しい話は後にして、焼売食べませんか?」
「ええ、そうしましょう。せっかく買ってきていただいた焼売が冷めてしまいます」
そうして俺たちは、付属するハシを使って焼売を食べる。一口目を口に入れた時に、リイが目を細めたのが印象的だった。しばらくは黙々と焼売を食べる時間が続いた。干し肉や水ばかり流し込んでいた俺の口は久しぶりのまともな食事に歓喜の声をあげているかのようだった
「..........とても、美味しいです」
リイがポツリと呟く。俺
「それはよかったです」
俺もリイもハシを器用に使って焼売を食べる。その姿が何かおかしくて俺は吹き出してしまった。
「...ふっwww」
「どうなさいましたか?」
「いえ、人と一緒にハシを使って食事をすることなんてもうないと思っていたので。おかしくって」
「はは、奇遇ですね。私も同じことを考えていたところです」
「それにしてもよかった、焼売がリイさんの口に合って」
「ええ、大変美味です。故郷の母を思い出しました。ありがとうございます」
「それはよかったです。リイさんの時代でも焼売ってたんですね」
「ええ、たしか【主人公】さんは、私が生きた時代の遥か未来からこの世界にいらっしゃったのですよね」
「はい、えっと、リイさんの時代が唐の時代だから....だいたい千年後ですね」
「千年ですか....それは途方もない....。それに、あなたの生きた時代を見てみたかった」
「もし、来ることがあれば案内しますよ」
「それは大変頼もしいですね」
そうして、この後も俺たちは雑談に花を咲かせながら、ものの数分で焼売を完食した。
そうして、俺たちの会話の内容はより現実的なものへと移っていく。