第九十話 ごきげんよう
ルーナの案内で、馬車をとめ、馬を預けると、俺たちは宿を取るべく繁華街へと向かう。ルーナとコゼットの案内で俺たちは街を進んでいく。
「お二人とも、随分と慣れていらっしゃいますね」
リイが探りを入れるように問う。それに答えるのはコゼットだ。
「ええ、私どももこのジョスイへはよく来るのです。今回泊まる宿もその時のツテを利用させていただきます。宿の主は私どもの顔をご存知ですので先ほどのようにはいきませんわ」
「しかし、俺たちはそんなに持ち合わせが.....」
「ご心配なさらず、私どもが代わりにお支払いいたしますわ」
「それはどうも」
そうして、俺たちはいかにもな高級宿へと到着する。
「こちらになります」
と、コゼットとルーナは宿へと入っていく。俺たちも後を追う。
「ごきげんよう、バルジャン子爵家のコゼットですわ。二人部屋を二つお借りしたいのですが」
うお、生ごきげんよう、本当に言うんだ.........コホン、最初こそ俺たちのみすぼらしい姿を見てギョッとした宿の受付であったが、コゼットの顔を知っていたようで今回の宿代はツケということで合意した。
「では、夕食までは自由時間としましょう。それまで、私どもは部屋で休息させていただきますわ」と言い俺たちの部屋の鍵を手渡すと、部屋へと入っていく。
「では、俺は街へと買い物に出ます。リイさんはどうしますか?」
「私はお二方の護衛としてこの宿へ滞留いたします。お疲れのところ恐縮ですが買い出しと情報収集をよろしくお願いいたします」
「はい、俺が帰った時は部屋を二、三、二のリズムでノックしますのでそれ以外は開けないように」
この宿も高級宿ではあるが、現代のホテルのように完璧な警備とは言い難い。用心には用心を、だ。
「承知しました」