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訓練編1

翌日。

 ギルド訓練区画の一番奥、白く無機質な部屋に俺は立っていた。

 対面には因幡教官。無駄のない動きでタブレットをいじりつつ、淡々と状況を確認している。


「赤木。昨日の基礎動作、身体には残ってるか?」


「……たぶん、いや、大丈夫だと思います」


「その自信のなさが危ないんだよ」


 表情は相変わらずだが、昨日より柔らかい声音だった。


「今日は実践形式に入る。といっても本気の戦闘じゃない。ただ——動いている対象にバリアを展開できるかを見るだけだ」


 因幡教官が部屋の中央を指すと、天井からスピーカーが起動音を鳴らし、丸いドローンが数機ふわりと浮かんだ。

 攻撃力はない。けれど、一定速度で俺に向かってくる自律型の訓練用ターゲットだ。


「まずはひとつ。スピードは最低。焦らなくていい。いいか?」


「……はい」


 ゆっくり、深呼吸。

 昨日の基礎訓練で、展開の“感覚”はつかみかけていた。

 でも——実際に動いている物体に合わせるのは、まったく別物だ。


「ターゲット、スタート」


 ドローンが音もなく滑るように近づいてくる。

 俺は右手を前へ。

 魔力が胸の奥で響く感覚。そこに意識を向けて——。


「《展開型バリア》!」


 「バンッ」と乾いた衝撃音が室内に響いた。

 きれいな壁を描くどころか、俺の正面に斜めに傾いた半端な板が出現し、ドローンはそこへぶつかった。


 ガガガッ、と火花が散り、ドローンは弾かれて回転する。


「うわっ、!」


「おい赤木、集中切るな!」


 因幡教官の声が飛ぶが、俺はバリアの端がゆらつくのを感じて、慌てて魔力を押さえ込む。


 ——危なかった。

 少しでも気を抜けば、昨日の訓練で起きた“暴走しかけ”の再発になる。


 息を整えた俺を見て、因幡教官はタブレットを閉じた。


「見た目は悪いが、最低限はできてる。……ただ、その揺れ方、やっぱり気になるな」


「揺れ、ですか?」


「ああ。魔力が上下に跳ねる癖がある。展開型バリアは精神状態に敏感なタイプだ。だから——」


 因幡教官は俺をまっすぐ見た。


「君自身の“バランス”も鍛えないといけない。今日はそこも見る」


「……精神面、ですか」


「そうだ。防御スキル使いにとっていちばん大事な部分だ」


 ……、前の厳しい仕事で傷つけられたメンタルが  ここで出てくると思わなかった—



「次は二つ同時にいくぞ?動きはさっきより速い。いいな?」


「拒否権はないでしょう?」


因幡教官は無言で頷いた


 再びドローンが浮かぶ。

 今度は左右から同時に迫ってくる軌道だ。


 俺は呼吸を整え、集中し――。


「《展開型バリア》!」


 ……が、同時に二面を展開するイメージが頭の中でぶれてしまい、結果は最悪だった。


 バリアが片側に傾いて展開、その瞬間。


「——っ!」


 もう片方から来たドローンが俺の肩に当たり、軽い衝撃が走った。


「赤木! 止めるぞ!」


 因幡教官がタブレットを操作し、ドローンは停止。

 俺は痛む肩を押さえながら、悔しさで唇をかんだ。


「……すみません。集中が……」


「責めてるわけじゃない。最初は皆そうだ。ただ——」


 因幡教官は俺の右手をじっと見た。


「今の展開時、魔力の線が少し乱れていた。制御が不安定だ」


 思わず息をのむ。

 ——

 その言葉に、説明しがたいざわつきが胸の奥に走った。




「赤木。次は“避けながら展開”だ。今日いちばん難しいぞ」


 俺は拳を握り、頷く。


「……お願いします」


 こうして俺の実践訓練は、本格的に始まった。

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