冒険者ギルド
昼過ぎ、管理局を後にして向かったのは、第四都心迷宮のすぐ近くにある冒険者ギルド支部だ。
バリアが発現した以上、登録しておかないと後々面倒になる。
もちろん、冒険者として本格的に活動するつもりは……今のところない。生活のために“候補”にはしているけど。
ギルドの建物は、ガラス張りの近代的なビル。
もっと泥臭い場所かと思っていたけれど、意外と清潔だ。
「登録の方ですね? こちらへどうぞ」
案内に従い、必要書類を書き、身分確認。
その流れのまま、登録カウンターに通された。
「……スキル保持者の“基礎訓練”も、合わせて必須となっています」
「必須、なんですね」
「はい。どのスキルでも最低限の扱い方を学ばないと危険ですから」
危険なのは重々承知している。
昨日、いや今日の午前中、死ぬほど体感した。
「では、訓練担当を呼びます」
***
トレーニングルームは地下にあった。
まるで体育館と研究所を足して2で割ったような場所。
壁は衝撃吸収材で覆われ、天井にはセンサーと監視カメラがびっしり。
そして、その中央で腕を組んでいたのが――訓練官。
「赤木篤だな? 俺が担当の因幡誠司だ。よろしく」
年齢はわからない
日焼けした肌に無駄のない体つき、落ち着いた低い声。
いかにも“現場叩き上げの教官”って感じがする。
けれど目つきは柔らかく、威圧感より安心感の方が強い。
「ギルド所属の訓練官なんですよね?」
「一応な。管理局からの出向みたいなもんだ。新人のスキル保持者は大体、俺が一通り見てる」
そう言って、因幡さんはタブレットを操作しながら俺の方を見る。
「《展開型バリア》か。そこそこ珍しいが、扱い方さえ間違えなければ頼もしい。まずは基礎からだ」
***
「ではやってみろ。構えは自由。発動イメージは――“守る”だ」
「守る、か……」
昨日はただ“怖い”だけで発動していた。
意図的に出せるかはわからない。
手を前に出し、深呼吸。
(守る……守りたい……)
「……っ!」
指先に微かな温度。
空気が震え、薄い膜が波紋のように広がる。
パアン――!
《展開型バリア》が、俺の前に張りついた。
「お、成功だな。初回にしては早い」
因幡さんは驚いたように目を細めた。
「発動速度がかなり速い。昨日、命がかかった状況だった影響かもしれんが……これは素質だ」
「そ、そうですかね……?」
「謙遜するな。速さは武器だ。だが――」
因幡さんは指を一本立て、俺のバリアに軽く拳を当てた。
コツン。
その軽い衝撃で、膜が一瞬ゆらいだ。
「強度はまだ弱いな」
「やっぱり……」
「だが問題ない。展開型バリアは“扱えば扱うほど伸びる”タイプだ。防御力よりも“使いこなす技術”が大事だ」
因幡さんは笑ってみせた。
「ここからは、俺が軽く攻撃をする。もちろん威力は最低限だ。割れたら仕切り直しだ」
「は、はい!」
***
因幡さんが距離を取り、軽くステップを踏む。
構えた瞬間、雰囲気が変わった。
まさに“戦う人の動き”。
「いくぞ」
次の瞬間、因幡さんの拳がバリアに触れた。
コンッ。
さっきより少しだけ強い。
バリアがたわむが――持ちこたえる。
「いいぞ、もう一回」
コツッ。
「もう一丁」
コツン。
だんだん強くなっていく拳。
バリアの振動が掌に伝わり、額に汗が滲んだ。
「――っく!」
ビシッ!
小さな亀裂。
やばい。
「まだいくぞ!」
「う、うわっ――!」
ビシビシッ!
しかし俺は食らいついた。
必死に、維持しようとする。
守る。壊させない。
(守れ……!)
バリアが光を強め――
ピシィンッ!
砕け散った。
同時に俺は膝から崩れ落ちた。
「……っ、はぁ……はぁ……」
「よし、ここまでだ」
因幡さんはすぐ駆け寄り、倒れないよう肩を支えてくれた。
「初日でここまで粘るとは思わんかった。やはり素質がある」
「そ、そう、ですかね……」
「ただし」
因幡さんは眉を寄せる。
「バリアが、少し“意図より強くなりすぎる瞬間”があった。わかるか?」
「……え?」
「お前が意識してない時だ。攻撃を受けた瞬間、バリアの出力が自然に跳ね上がった」
俺は固まる。
そんな感覚は……あったような、ないような。
「展開型バリアは本来、出力の跳ね上がりは起きにくい。強化は訓練で少しずつ積み上がるもんだ。だが――」
因幡さんは言葉を選ぶように、慎重に続けた。
「お前のバリアは一瞬、“制御から外れかけた”」
「制御……?」
「心配しなくていい。初期段階では珍しくもない。だが、安全のために今後の訓練で重点的に見る」
制御から外れる。
昨日、俺を守ったバリア。
その力が“不安定”だというのか。
胸の奥に、得体の知れないざわつきが生まれた。
「今日はここまでにしとけ。明日は本格的な実践訓練に入る」
「……はい」
立ち上がりながら、俺は自分の手を見る。
確かに、さっき――
“何か”が勝手に強くなった気がした。
バリアは俺のスキルだ。
なのに、俺が追いつけていない。
改善点などあれば教えて欲しいです。
誤字、脱字設定のズレなども教えてほしいです




