再発
ちょっと苦戦したかも
ダンジョンから戻り、シャワーを浴びたあと。
寮の自室。夜の廊下は静かで、窓の外には街灯の光がぼんやり広がっている。
俺はベッドに倒れ込み、天井を見上げた。
(……疲れた。けど、何とかやり切れた)
二層“手前”まで触れた練習は成功した。 本番の戦闘でも、崩れなかった。
胸の奥に安堵が広がる──その直後だった。
コツン。
小さな音が、壁の向こうから響いた。
「……っ」
全身が強張る。
あれだ。忘れようとしても忘れられない、あの音。
前より弱い。前より遠い。それでも、確かに“そこ”にいる。
コツ、コ……
(……また、来た)
二層訓練の影響か、境界が敏感になっている。感知しすぎている可能性もある。それでも、これは──
“外からの反応”だ。
コツン。
今度は、すぐ近く。耳の後ろを叩かれたような距離。
俺はゆっくりと息を吸い、境界を思い浮かべた。
(……来るなら、合わせてやる)
薄く、静かに。意識の奥に一本、線を引く。
その瞬間。
“向こう側”が、こちらに触れた。
言葉じゃない。音でもない。ただ──俺の名前の“輪郭”だけが、微かに響いた。
……アツ……シ。
「……っ!」
立ち上がり、後ずさる。
声は消えた。ノック音も途切れた。だけど、確かに“呼ばれた”。
(また繋がれかけてる……)
二層訓練で境界の形が鮮明になったせいか、向こうの“認識”も強まっている。
意識がざわついた。(――まだ大丈夫だ。 今回は“繋がりかけただけ”)
だが確信している。
これは、偶然ではない。
二層に近づくほど、“向こう”も近づいてくる。
(……次はもっと、はっきり来る)
胸の奥に、静かな覚悟だけが残った。
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