覚悟
「……よし。覚悟は確認した」
因幡教官はタブレットを閉じ、深くうなずいた。
「赤木。
明日から、お前には《展開型バリア》第二層の正式な訓練に入ってもらう」
胸が静かに熱を帯びる。
(……ついに、第二層……)
真白が不安と期待の混ざった表情で俺を見た。
迅は腕を組みながら、いつもの落ち着いた声で言う。
「訓練場所は……やっぱりここ、密封型ですか?」
因幡教官は肯定するように一度うなずいた。
「ああ。閉鎖度の高い部屋は他にもあるが……
赤木の場合、“外を切るより、内側の反応を見たい”」
「内側……」
(つまり、俺の中の“境界そのもの”……)
因幡教官は続ける。
「第二層、『反転境界』は、こちらが環境を変えすぎると逆に扱いづらい。
“外部の影響は最低限に抑えつつ、内側を観測する”──
密封型が一番向いている」
真白が安心したように息をつく。
「よかった……。また、なんか特別な部屋とかに一人で放り込まれるのかと思った……」
因幡教官は軽く首を振った。
「赤木を単独で訓練させるつもりはない」
「……じゃあ?」
迅が問い返すと、教官は端的に答えた。
「明日も“三人で”ここに入る。
真白、迅──お前たちは補佐として帯同する」
真白は目を丸くし、すぐに笑った。
「……ならよかった。篤がひとりで追い詰められるのは嫌だから」
迅も短くうなずく。
「俺たちがいたほうが赤木も集中できるだろうしな」
因幡教官は三人を見渡し、淡々と続けた。
「第二層の訓練では、“外側に張る”防御ではなく──
境界の向きを変える操作を行う。
これは、反応が強すぎると精神負荷が跳ね上がる」
俺は思わず、さきほどの“コツン”という音を思い出した。
(……俺の内部にあるもの……
あれに、触れる……?)
因幡教官は俺の動揺を正確に見抜き、はっきりと言った。
「赤木。
“引かれた”ことで境界が薄いんじゃない。
境界の形が浮き上がっただけだ」
その一言に、胸が少し軽くなる。
(……薄いんじゃなくて、見えていただけ……)
「明日からは、その“輪郭”を自分で握る訓練だ。
お前の力は危険だが──使えるようになれば、お前の命そのものだ」
真白がこっそり俺の袖を引いた。
「……大丈夫。あたしたちもいるから」
迅も短く頷いた。
「今日の様子なら、いける」
俺は深く息を吸い、因幡教官に向き直る。
「教官……お願いします。
明日から、第二層を扱えるようになりたい」
因幡教官はゆっくりと、しかし確実にうなずいた。
「よく言った。
では三人とも──明日0600、密封型訓練室に集合だ」
そこで教官の表情がわずかに緩む。
「今日は休め。
赤木……境界が揺れるような考え事はするな。
“入口”を作らないようにな」
「……はい」
その忠告だけで、思わず喉が鳴る。
だが、もう逃げる気はない。
三人で訓練室を出る。
廊下の空気はさっきより温かい気がした。
真白が歩きながら言う。
「ねえ、絶対成功させようね。
だって篤は……一番頑張ってるんだから」
迅はため息をついたが、どこか楽しそうだった。
「成功させるしかないだろ。
明日から地獄だぞ、赤木」
「やめろ……今から胃が痛くなる……」
三人で笑った。
そして俺は思った。
(でも──
“押し返せる”って教官に言われたんだ)
明日から始まるのは、
《展開型バリア》本来の姿を取り戻すための訓練。
逃げ場のない外側に怯えていた俺が、
今度は、自分の内側へ踏み込む番だ。
(絶対、掴んでみせる)
そう強く胸に刻みながら、
俺たちはそれぞれの部屋へ歩いていった。
めっちゃ綺麗に区切れて気持ちいい!!
それはそうと、ブックマーク、星、レビュー、感想、心の底からお待ちしております。
ここまで読んでくださったなら、ねぇ?
追記:間違えて投稿してしまいました。
俺の貴重なストックがぁぁぁぁ
追記part2
ピッタリ1日と半日でPV1000達成!!
目標は1週間で500PVだったのにめっちゃ嬉しい!!
ちなみに投稿時点でブクマも星も0でガチ萎えしてるんでお恵みください




