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一話 イレギュラー

初投稿です。

前置きがまあまあ長いです。

許して下さい

俺――赤木篤は、都心の雑居ビルの屋上で缶コーヒーを開けた。

苦い。眠気は取れない。だけど、働かないと家賃が払えない。


「今日も軽作業か」


退職して半年。貯金は底をつき、ついに手を出したのが『ダンジョン関連の外部作業員』。

ダンジョンの中じゃなく、外側の設備点検や搬入だけをやる、ほぼ危険ゼロの仕事だ。


本来なら、だが。


***


現場は都心部にある政府管理のダンジョン、第四都心迷宮。

外周は高さ10メートルの多層フェンスで囲まれ、監視カメラがひっきりなしに回っている。


一般人から見れば近づくのも怖い施設だが、俺は今日もそこに向かっていた。


「赤木さん、今日は南側の配電盤の点検です」


作業責任者に声をかけられ、俺はヘルメットを直して返事をする。


「了解です」


ダンジョン外周に沿って歩く。

すぐ向こう側に、青黒い空間の揺らぎ、ダンジョン入り口がある。

都市にダンジョンが出現して十年。誰も驚かない光景だ。


俺は道具箱を下ろし、外周設備のパネルを開いた。


「なんか、変なノイズ」


計器の数値が少しブレている。だが、こういうのはだいたい老朽のせいだ。


気にせず作業を続ける。街の雑音と少し離れた警備隊の無線だけが耳に入る、いつもの仕事の風景。


………のはずだった。


ガサッ


「……?」


フェンスの影が揺れた。鳥か猫だと思った。ダンジョン外に魔獣なんか出るはずがない。


そう、出るはずがない。


ガサ、ガサガサッ。


嫌な音が近づいてくる。

工具を持つ手がわずかに固くなる。


「人……? じゃないな」


低い唸り声。小刻みに震える呼吸音。

フェンスの隙間から、黒い影がぬるりと覗いた。


四足獣。灰色の毛並み。赤い眼。


……見たことがある。

あれはダンジョン内の下層にしかいないスラッシュドッグだ。


「なんで外に?」


管理システムは完璧なはずだ。逃げ出したりしない。

できるはずがない。


理解が追いつくより先に、獣がフェンスをすり抜けた。

異形特有の空間ゆらぎ。

ここにいること自体が異常だ。


「!」


俺は反射的に後ずさったが、足がもつれて尻もちをついた。


逃げられない。


牙が開く。こっちに向かって跳んでくる。


死ぬ。


その瞬間


パァンッ!


透明な膜が弾けるように広がり、俺と獣の間に立ちはだかった。


「……バ、リア?」


手を伸ばすと、淡い光の壁が薄く震えている。

《展開型バリア》。

冒険者の間でも“珍しいけど微妙”と言われるスキル。


それが、俺から出ていた。


獣がさらに爪を叩きつける。

バリアが火花のように光る。

でも――割れない。


「持ちこたえてる…」


強い、なんてことはない。

一般的なバリアより少し硬いくらいだ。

でも今の俺には十分だった。


警備隊の怒号が聞こえ、数秒後には獣が射撃と拘束具で制圧された。


「外に魔獣? 本当に?」


警備隊員の一人が呆然とフェンスを見上げる。


「センサーには何も反応がなかったのに、、、」


ノイズ。さっき見た計器の乱れ。この魔獣。


全部、何かがおかしい。


「赤木さん、大丈夫ですか!」


「え、えぇ、たぶん」


俺は震えた手を見つめる。

さっき展開されたバリアは、もう消えていた。


偶然なのか。

限界状態だから発現したのか。


…………わからない。


わからないが、俺の平凡な日常は

たった今、確実に歪んだ。


その理由なんて、この時の俺は知る由もない。

けれど、後にわかる。


この本来起こりえないイレギュラーこそ、すべての始まりだった。


星、ブクマ誰か恵んで

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