5/6(火曜)『リスナー参加型ふぉすた』♯3
新規のリスナーさんをゲットするためSNSでゲームの宣伝をしてから配信開始。
同接三人。チャンネル登録まだ六人。たったの六人。登録、増えねぇな……。
「はぁい、どーも号六ななでーす。今日はリスナー参加型で『フォームマイスター』プレイしまーす」
オープンワールド系のアクション『フォームマイスター』。操作がシンプルなのでアクションに慣れてなくても遊びやすい。
「いらっしゃいませー」
オンラインでほかのプレイヤーも呼び込めるのでリスナーさんに参加してもらってバトルのサポートをしてもらう。
「前回ボコられて悔しいから、裏でちょいレベル上げしといたよ」
メニュー画面を表示して見せる。基本ステータスが上昇するだけでかなりバトルが楽になる。さらに配信外でべつのフォームもゲットしておいた。
「レベル上げて新フォームだぜぃ。見て見てこれ」
今回のフォームは台形。
装備するとショットガンみたいにタマをバラ撒くタイプ。射程距離は短めだけど、レベルを上げるとタマ数が増えて攻撃範囲がさらに広がる。なにより射出スピードがメッチャ速い。
「これならあのリングにヒットするっしょ」
米粒タケル :やっぱ、そーなるよね
爆裂思春期 :カッパ、そー鳴くよね
「どこでカッパ発見しとんねん。韻、踏めばいいってもんじゃねーぞ。鳴いてみーやカッパ」
米粒タケル :容赦ない無茶ぶり
爆裂思春期 :か、か、カパ。ごめんなさい
米粒タケル :普通に怒られた
「ほな、行くよー」
このメンバーと合流して気づいた。リスナーさんもまったく同じ装備だった。二人ともショットガンを持っている。どうやら私と同じ結論に達したらしい。乱れ撃ちで削る作戦だ。
で、三人で目的地へ向かう。次のエリアリーダー撃破のために。
移動中、自然と雑談の流れになる。
「そー言えばさあ、この前テレビでコンビニスイーツの特集やっててね。最近の商品ってスゲー種類が多いでしょ?」
米粒タケル :しかもウマイ
爆裂思春期 :血糖値、上がる
「血糖値が怖くてスイーツ食えるか! 糖分は人生だろっ」
米粒タケル :名言、出た
コンビニスイーツといえばプリン、シュークリーム、ロールケーキ、もちもち系、本当に多種多様。
「毎回、スイーツコーナーで脳内バトルが開始されるよね」
米粒タケル :全部は買えないからね
爆裂思春期 :意外と消費期限が早い
「そうそう。でさー、私としてはコンビニスイーツって三百円が限界なんよ。もう五百円とか行くとそれ、お弁当レベルじゃん。デザートの領域じゃないんよ、これ分かるこれ?」
米粒タケル :それ分かるそれ
爆裂思春期 :アレ迷子オレ
「コンビニで迷子になるな。ほらもう到着だよー、ボス戦、行くよー」
雑談しているあいだにエリアリーダーのところに到着。フィールドにある光るエフェクトに触れると画面が暗転。ボスバトルの空間へと移動する。
「よっしゃ、行きますかー!」
巨大な密室空間。敵も味方も脱出はできない。
とにかく今回は先手必勝だ。なんかトラブル起きたらその時、考えるってことで。
「だーらららっ!」
台形フォームでショットガンを撃ちまくる。残弾の設定は無いのでひたすら攻撃ボタンを押しまくり。
「ここで……直撃させる!」
ボスのリングって奴、通常移動はメッチャ遅いので攻撃はちゃんと命中する。
が、ある程度の距離まで接近すると突然の高速移動で逃げられる。なので近づきつつショットガンでとにかく敵のHPを削る。
距離の詰め方に失敗するとタマをバラ撒いて逃亡。また追いかけなきゃいけない。
「このパターンだと、ちょい時間かかるなー」
たぶん勝てると思うけど与えるダメージ量が少ない。
と、画面の上のほうに目が留まった。戦闘画面の上に数字が表示されている。前回のボス戦にこんな表示なかった。
数字は二十八。どんどん数字が減っていく。カウントダウンだ。
「あれ、もしかして制限時間ついてる?」
米粒タケル :今日アップデートされた
爆裂思春期 :ボス戦は三十分やで
「今日からアップデートされたの? マァァァジか、うわぁなんでだよ」
のんびり様子を見ている余裕はない。距離を詰めて攻撃、さらに攻撃と繰り返す。
「火力が足りない!」
どんどん時間が消費されていく。このペースだと間に合わない。
「撃て撃て撃て、時間切れで敗北とか無いでしょ!」
くっそ防御力が高すぎる。
「ヤッバイ、あと十二分!」
敵のHP、やっと半分。残念ながら丸ごと半分も残っている。確実にタイムオーバーの流れだ。
そこで急にボス戦の曲が変わった。まるで勝利が確定したようなテンション爆上げ音楽。
「どーゆーこと?」
変化は突然だった。
不意にポンデリングの表面が崩れ落ちた。
もちろん攻撃の手は止めない。
こっちの攻撃がほんの数発掠っただけでゴリゴリ敵のHPゲージが急激に減っていく。
もしかして……。
「ポンデのガワが剥がれた!」
さっきのグラフィック演出は装甲が剥がれ落ちたってことか。
「こいつ防御ガタ落ちしてる。今がチャァァァーンス!」
移動スピードに全振りしているせいか、中身の防御力がメッチャ低い。
米粒タケル :囲め囲め
爆裂思春期 :ハチの巣じゃあああ!
「弱点、剥き出し! ポンデのポンデ無しがあああーっ!」
唐突に勝機が見えた。与えるダメージ量が二倍、三倍に増えている。
みるみる敵のHPが減少して最後に光り輝いた。
ポンデ爆発。
そして勝利音楽が流れだした。
レベルアップ。素材アイテムのゲット。
米粒タケル :さらば、ポンデ
爆裂思春期 :ドーナツ爆散エンド
「いやー、キツかったあああー。マジで最初キツかったな、ポンデ」
画面が切り替わり通常フィールドに戻ってきた。
そのまま三人でスタート地点まで無事に帰還。拠点できちんとセーブも完了。
「今日はサポートありがとねぇ、ホント助かったわー」
ソロプレイでは絶対に勝てなかった。リスナーさんには感謝やで。
「明日もフォームマイスターやりまーす。それではエンディングうううー!」
こうしていつも通り配信枠を閉じる。激しい戦いだった。
「ちょいハラ減ったな……。カップ麺あったかなー」
深夜一時。食事を摂るにはよろしくない時間帯だ。普通なら我慢する。
が。
「いや私、Vtuberだから太らんしょ」
そうだ。体重の増減があったところでキャラデザインは変わらない。私は最強。
カップ麺にお湯を入れてきっちり三分、待機。
私は時間を守るVtuber。
「できあがりじゃあー! さあ皆の者、戦の時間ぞおーう!」
ひとりです。
深夜のためテンションがおかしくなる。
そしてスープを一口。さらに麺をすする。
「深夜ラーメンうまー!」
真夜中のカロリーは美食であります。
こうして私の一日は深夜ラーメンと共に終わりを告げた。
ごちそうさまでした。