可憐に咲く
かすかな輝きが、ぽとりと落ちる。「私の勝ちだね」と微笑んだ。
いつにも増して、綺麗だった。
浴衣は線香花火のわずかな光を受けて、紫陽花が暗闇に咲く。
静寂が愛おしかった。祭の喧騒から離れ、世界は作られる。
この時間を手に入れるには、あと一言。
この時間が無くなるまで、あと一言。
唇を舐めた。屋台の平凡な焼きそば、大きくできなかったわたあめ。氷が隠れるまでかけたブルーハワイ。
僕らは、変わるのかな。変われるのかな。
大輪の花、切り裂く轟音。
歓声が世界を壊し、身体が震える。
同じ空を見上げる。
「来年も見れるかな」
パチパチ…と、その手から輝きが落ちていった。