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小説

正義の墓地

作者: 永井晴


「おい!あすこだ!」

大量の兵士たちはある小さなお城に向かって一目散に駆けてゆきます。

もう既に農民たちはお城のベランダに立ったある王様に槍をついています。

「おい!降りてこい!」

農民たちは叫んでいます。

兵士たちはようやくお城に着くと、農民たちの武器を取上げ、いいから見ていろと皆口を揃えて言うのです。農民たちは皆呆気にとられたようになってもすぐに兵士たちを応援しました。

そうして遂にある王様がベランダから落ちて、一同はとても喜びました。

農民たちは兵士たちに感謝を伝え、兵士たちは農民たちに君たちもよくやったと、誇らしげに言葉をかけました。

その町には正義の空気が訪れたと思われました。


しかし、

「おい!あそこだ!」

と遠くからより大量の兵士たちが町に向かってきました。彼らはあの王様をとても慕っていたのです。

町にいた兵士たちや農民たちは皆それに気づかず、あの王様と同じように地べたに倒れてしまいます。

「やったぞ!仇をとったぞ!」

と駆けつけた兵士たちは皆で喜びました。

しかし、自分たちが慕っていたあの王様も忌み嫌った敵と同じように倒れているのです。

ようやく、その町には正義の空気が訪れたと思われました。


しかし、

「おい!あすこだ!」

とまた別の兵士たちが大量の群で押し寄せていました。

喜びに浸っていた兵士たちは皆呆気なくやられてしまいます。また幾人の体が地面と冷たい抱擁を交わしました。

さあ、遂にその町には正義の空気が訪れたと思われました。

人々は勝利に舞い上がり、歌やダンスをして一夜を明かしました。


次の日、兵士たちは自分たちの町へと帰って行きました。口笛が綺麗な鎧の反射と共に正義を歌うようでした。

その町は王様がいなくなって、踏み抜かれた幾千の屍がただ転がる廃墟となってしまいました。

それから何百年と経ってそこを訪れた頭のいい人は、そこを悪意にまみれた地獄の墓場であると譬えて、悲しい唄をうたったと聞きます。



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