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車窓から  作者: 緋色ざき
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卒業間近

 飯能駅から西武秩父線に乗る。

 そして、向かい合った青い座席に座り、右側の車窓から外を眺める。

 山や川、木々、住宅が僕の前に現れては通り過ぎていく。

 そういえば、今度友達とハイキングに行こうと約束していたっけ。

 何気なくそんなことを思い出して手帳を開いた。三月十五日。そう、この日だ。そしてその右下には、卒業式の文字。

 僕は思わず手で髪を掻いた。現実に引き戻されたような気がした。

 大学四年生の冬。卒業間近。

 卒論は提出した。単位も足りている。内定も持っている。だから僕は社会に出ることになる。四月から働き始めるのだ。

 すでに内定者懇談がは何回か開催されていて、内定者や人事の人たちはいい人ばかりなことは分かっている。それに僕自身、学生のうちからいろいろと精力的に活動していたこともあり、会社の中である程度働けると思う。そして、早いうちから活躍して、なんてことを考え期待に胸を膨らませることもある。

 けれどもときおり漠然とした不安が押し寄せる。僕はこのまま社会に出て、進んでいけるのだろうか。

 トンネルに入り、窓ガラスに映る僕。その顔はひどく不安げである。

 僕は前を向いて小さく息を漏らした。電車はトンネルから出て、再び陽光に照らされた大地と向かい合う。

 山なりな大地。きっと僕のこれからの人生も平坦なものではない。そんな道を歩んでいく。 

 きっと、これからはふらっと秩父の温泉へ入りに行ける機会も減っていく。だからこそ、いまこの時間を楽しもう。

 僕は手帳をカバンにしまい、再び車窓から外を眺めた。


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