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00.プロローグ

 焼けた建物の中で怯える私に手を差し伸べてくれた。

 それだけ。たったそれだけで、私は恋に落ちたのだ。

 

「フィニアス様!今日も本当に素晴らしかったですわ!流麗な剣さばきに、無駄のない体術。揺れる髪まで目を奪われましたの……はぁ……」

「……テイル嬢。今から頭の悪いことを聞くが、ここがどこかお分かりで?」

「おかしなことを聞きますわね。わかってますわよ?」


 騎士団の訓練場から離れた王宮の通路のど真ん中。

 訓練を終えて歩いていたフィニアス様の元へと小走りで駆けた。

 ほんのりと緑を帯びた黒髪を靡かせて、フィニアス様が振り返る。

 目の前で止まり、うっとりとフィニアス様について語れば、その姿を思い出して悩まし気な息までついてしまった。

 通り過ぎる人達は私のことを日常風景の一部のように笑いながら過ぎ去っていく。


「王宮の通路ですわよね?」

「君にはここが見えないのか」


 金色の瞳でフィニアス様が示す先には、男の人を示すマークが、そして隣には女の人を示すマークが描かれている。

 どこにでもある、お手洗いのマークだ。

 お手洗いのマークとフィニアス様を何度か見て、私はこてんと首を傾げた。


「それが、何か?」

「恥じらいというものを習ってきてくれないか」

「まぁ」


 お手洗いは生理現象なのだから恥ずかしがる意味がわからない。

 フィニアス様は理解に苦しむと言いたげに眉間を揉んだ。

 何も中についていきたいと言っているわけではないのだけど。


「いつも言っているが、俺は伴侶を取るつもりは無い」


 話は以上だ、と言ってフィニアス様がお手洗いの向こうへ消えていく。

 フラれることなど想定内だ。

 むしろ受け入れてもらえると思っていない。

 私はただ、フィニアス様に恋をしているだけなのだから。

 

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