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3話②
「人気者だな、天野先生」
職員室に戻ってきたヒナに、俺は話し掛けた
「なんの冗談だよ」
「冗談なんかじゃないさ、さっき、生徒に話し掛けけられてただろ?」
「見てたのか」
「ああ」
「勉強熱心なんだよ、授業が終わる度に質問しに来る。成績優秀なのにな、まあ、勉強熱心だから、成績優秀なんだろうけど……あっ、そう言えばさ、尚も高校生の時テストの順位いつも上位のほうだったのに、僕たちに勉強教えて欲しいって言って来たことあったよね、なんか、懐かしいな……」
そう言えばそんなこともあったな
高校時代、俺はヒナと仲良くなる切っ掛けがほしくて、勉強を教えてくれと言ったことがあった
そして、俺とヒナと伊集院は時々三人で勉強したり一緒に遊びに出掛けたりした
でも、二人の間には俺の入る隙間なんか一ミリもなかった
二人はそれほどまでに強い絆で結ばれているように見えたのに、伊集院はあっさりとヒナを捨てた
高校卒業と同時にヒナには何も告げずに海外へ旅立った
あの当時のヒナは見ていられなかった
俺はヒナのあんな悲しい顔はもう見たくない