3話①
僕が尚の家で良い潰れて、そのまま泊った日から一週間以上が過ぎた
その間理事長は僕の家に一度も来ていない
あんなに毎日のように通って来ていたのに
ホッとしたような、なんだかんだ寂しいような
そんなことを考えながら、廊下を歩いていると
「天野先生!」
と、呼ばれた
声をした方を向くと、先ほど授業を終えたばかりのクラスの生徒、新田虎之丞君が立っていた
「新田君、どうしたの?」
「あっ、今日の授業でやったここの問題なんですけど……」
「ああ、これ?」
「はい」
勉強熱心な生徒だ。毎回授業が終わる度に必ず質問しに来る
勉強ができないわけではない。むしろ、成績優秀だ。確か、入試の成績はトップだった
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「人気者だな、天野先生」
職員室に戻ると、尚が話し掛けて来た
「なんの冗談だよ」
「冗談なんかじゃないさ、さっき、生徒に話し掛けられてただろ?」
「見てたのか」
「ああ」
「勉強熱心なんだよ、授業が終わる度に質問しに来る。成績優秀なのにな、まあ、勉強熱心だから、成績優秀なんだろうけど……あっ、そう言えばさ、尚も高校生の時テストの順位いつも上位のほうだったのに、僕たちに勉強教えて欲しいって言って来たことあったよね、なんか、懐かしいな……」