2話②
俺の名前は笹本尚
私立高校の教師をしている
今日は同僚の天野陽向と俺の家で宅飲みすることになった
「俺、着替えてくるから、テキトーに座って待ってて」
「うん」
「ヒナ、そのままだったら、スーツしわくちゃになるだろ、俺の服貸すから着替えて」
ヒナとは高校も大学も一緒だった。そして、勤めている学校も一緒だ
「うん、ありがとう」
「今、つまみ作るから、待ってて」
「僕も手伝うよ」
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「ヒナ、あんまり飲み過ぎるなよ」
「わかってる」
伊集院と再会してから、ヒナの様子がおかしい
「伊集院と何かあった?」
「あったというか……」
再会してから、毎日のように家に押し掛けて来る?ヒナの作ったご飯を食べて帰る?
「それ、完全にストーカーだろう」
「うーん?でも、伊集院君も悪気があるわけじゃないと思うんだ、多分、僕の作るご飯が懐かしいだけだと思うから」
「懐かしい?」
「うん、ほら、僕と伊集院君の家って隣同士だったでしょ。伊集院君って一人暮しだったのに、料理全然できなかったから、僕がいつもご飯作ってあげてたんだよね」
「………」
「伊集院君はさ……」
「ヒナ?」
寝たのか?だから、飲み過ぎるなって言ったのに
このままここで寝たら、風邪を引くかもしれない
俺はヒナをベッドまで運んで寝かせた
相変わらずヒナは可愛いい顔してるな
高校時代も大学時代も、ひそかにヒナに想いを寄せている子たちはたくさんいた。今だって、生徒たちにも結構人気がある
でも、その事に本人は全く気づいていない
ピンポーン
不意に玄関のチャイムが鳴る
俺は時計を見る
もう20時を過ぎている
一体こんな時間に誰だ?
玄関を開けると伊集院が立っていた
「陽向を迎えに来た」
「はっ?何言ってるの?」
「陽向は僕が連れて帰る」
「そんな権限、伊集院にはないだろ、それにお前ヒナのあとを付けて来たのか?それ、ストーカーだよ、れっきとした犯罪行為。伊集院グループの次期社長が、経営している学校の教師にストーカー行為しているなんてことが世間にばれたら不味いんじゃないの?」
「ストーカーではない」
「じゃあ、何?まあ、どうでも良いけど、ヒナは今、俺のベッドで寝てるから帰ってくれ」
「笹本、お前」
「お前のことだ、金と権力を使ってヒナと俺の身辺調査はしたんだろう。だったら、俺とヒナの関係もわかっているはずだ」