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1話③
私の名前は如月玲音
伊集院グループの次期社長伊集院瑠華様の秘書だ
そして、最近の日課は天野陽向と言う男の家に瑠華様を迎えに行くことだ
ピンポーン
玄関のチャイムを押す
「瑠華様をお迎えにまいりました」
「今日は来るの早かったな、玲音」
「スケジュールが、詰まってますから」
「まだ、陽向のご飯食べてない」
「理事長、お仕事が入っているなら帰ったほうが良いんじゃないですか」
「帰るよ。帰るけれど陽向のご飯食べてからだ、玲音、少し待って」
「仕方ないですね、じゃあ、僕は車で待ってますから、食べたらすぐ来てくださいね」
「うん、わかった」
全く瑠華様にも困ったものだ
相変わらずマイペース過ぎる
このマイペースさは幼い頃から変わらない
しかし、一体誰が想像できるだろう
ビジネスにおいては、どんな時でも冷静沈着に判断を下す瑠華様が、初恋の相手を一途に想い続けて、その恋の実らせ方を未だにわからずにいるなんて……
実際の瑠華様は世間が抱いているイメージとはあまりにも掛け離れ過ぎている
本当の瑠華様を知っているのはこの私だけだ