シンデレラの涙
「えっ、レラ...泣いてる?大丈夫じゃないよね??」
「泣いてないよ。ただ目にゴミが入っただけだよ。時間なくなっちゃうから、質問するね。」
強がって質問を続けるレラは何かにおびえているみたいで、何かから逃げているようだった。それから、なんで泣いたのか聞けないまま、その時のことはなかったことのようになった。
あれから、数週間。三月になりかける日のことだった。席が近くなって以来、なんとなく私たちは仲良くしていた。なんとなく、というよりはかなりべったり仲良くしていた。あの日のことは、触れられたくないようだったから、なんで泣いたのか聞くことができないのが少し気がかかりだけど。レラは知れば知るほどイイ子だった。動物が大好きで、お掃除したり、料理したりするのも得意なthe女子の鏡みたいな子。それだけ聞けば、まじめな感じもするけれどほんとに親しみやすくて、気さくで。けど最近。レラはよくボーっとするようになった。何かを考えているかのような。何かに悩んでいるかのような。悩みがあるなら相談してほしいけど聞いてほしくなさそうな顔をしているから、聞きたくても聞けない。
その日は、久しぶりの部活の日だった。私は、部活なんかもめんどくさくなってしまって成績の為の様な半ば、帰宅部の様な部活に一応入っている。レラは、いろんな部活から勧誘を受けていたみたいだけど、どの部活にも入らなかった。今日のレラもなんだかぼーっとしていて、会話もなんだかつながらなくて。悶々と考えていたら、人にぶつかった。
「あっ。すみません。」
ぶつかったのは、私と同じくらいの男の子だった。多分、中学生。背は高めで、キリっとしたイケメンだった。夜の闇みたいな髪ともうすぐ夜が明ける空みたいな瞳が印象的な男の子。この辺りにはいない、イケメン。ふと、レラを思い出した。二人が並んだら、美男美女できっと美しいんだろうな、なんて。
「あの、不躾かもしれませんが、お尋ねしたいことがあるのですが。」
「へ?」
イケメンが喋った。声までかっこいいけど、質問って何だろう?道案内かな?私、地元の地理も微妙なほどに方向音痴なんだけどなぁ。
「この辺りに、最近転入してきた女の子はいますか?」
「は?」
え?この辺りに、転入してきた女の子?知ってどうなる。何聞いてんのこいつ。こんなイケメンな顔しておいて実は犯罪者予備軍か。私が思い当たる、転入してきた女の子なんてレラくらいしか思い浮かばないけど、本能的にこいつにそれを教えるのはおかしいし、友達の個人情報をうかつに渡す趣味もない。
「何言ってるんですか。あなた。」
そう、言い残して私はそいつの前から立ち去った。
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