シンデレラとの親交
きっかけは、授業でよくある「ペアを作ってください」だった。いつも一人の私は、先生と組むことになっていたけれど、彼女が転入してきたおかげで私は彼女とペアを作ることになった。あまりにも美しい彼女は、姿形だけではなく、運動神経も抜群で、頭脳明晰、手先も器用、とハイスペックすぎて凡人である私たちは彼女と関わる勇気が出せないせいで転入してきてから一週間彼女に友達はできなかった。
「よろしくね、淵野さん。」
「よ...よろしくね。新出さん。」
「レラ、でいいよ。クラスメイトだし。今日の課題はお互いの紹介をしようってことだしね。」
喋っている言語は同じなのに、なんだかとても美しい言葉を使っているみたいである。
「私も、麻衣でいいよ。よろしくね、レラ。」
「うん!」
そう言って笑った彼女の顔は人間離れした美しさよりも、中学生らしいかわいらしい笑顔が浮かんでいた。お互いのことを質問しあっているうちに、自然に会話ができるようになった。話してみると、レラはいたって普通の中学生だった。まあ、いたって普通ではないけれど。主に顔が。でも、明るくて親しみやすい口調に、よく笑って、ちょっとした気遣いややさしさがにじみ出る彼女は、人と関わることが面倒になっていた私にとって、久しぶりに一緒にいてめんどくさくない、むしろ一緒にいて楽しい相手だった。今回、ペアを作ったのは英語の授業。お互いのことを英語でスピーチしよう、みたいな感じの内容だったため、お互いの趣味や家族構成などを質問しあった。
「麻衣は、好きな事とかあるの?趣味、みたいな。」
「まー一応、読書。とかかな」
「へ~、何の本読んだりするの?」
「いろんなのを読むよ。ファンタジーも大好きだし、ミステリーとか医療系もよく読むかな~。」
「一番好きな本は何??」
「う~ん。恥ずかしいけど、一番好きな本はシンデレラかなぁ。王道な話だけど。なんか好きだなぁ」
「へえ~シンデレラか~。私はあまり好きじゃないけど、王道だよね。じゃあ、次の質問。家族構成は?」
「弟が一人。あとは、お父さんとお母さんと四人で暮らしてるかな。レラは?」
「私は、お姉ちゃんが二人とお母さんと一緒に暮らしてるよ。」
「お姉ちゃんが二人か~。いいなあ、私もお姉ちゃんが欲しいなあ。何歳くらい離れてるの?」
「一番上の姉とは3歳差で、二番目の姉とは2歳差なの。二人ともすごく優しくて面白い姉なの。お母さんも、怒ると怖いけど、いつも優しくて大好き。」
家族のことを話すレラの声はだんだん小さくなっていく。
「レラ?大丈夫?どうかした?」
思わず声をかけると、レラは私の方を見て小さく笑った。
「うん、大丈夫だよ。じゃあ、次の質問ね。」
そう笑った彼女の顔には、涙が伝っていた。
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