表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真なる聖女を国外追放し、 偽聖女を持ち上げた結果滅びかけている国の、 聖女代理に任命されてしまった……!  作者: 江本マシメサ
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/68

ハト・ポウのこれまで

 聖女に仕える守護鳥は、世界の果てに存在する聖樹になる・・

 木の実のように、卵がたわわに実っているのだ。

 聖女が産まれるのと共に殻が割れ、孵化ふかする。

 その後は、聖女に喚ばれるまで、聖樹のもとで待つのだ。


 通常、聖樹になる守護鳥はひとつ。

 けれども、愚かな魔法使いが世界のことわりを変えたことにより、聖樹にいくつもの守護鳥の卵がなるようになった。

 世界にひとりだった聖女が、いつしか国にひとり生まれるようになったわけである。


 そんな状況の中、真なる聖女の守護鳥が生まれた。

 白い鳩の姿をした守護鳥は、まさかの状況にギョッとする。

 たくさんの卵があるだけでなく、すでに守護鳥がいたのだ。


『よお、後輩。お前さんの聖女も、産まれたみたいだな』

『あ……はい、おかげさまで』


 まさかの先輩に、鳩の守護鳥は戸惑う。

 何か物申したかったものの、相手は鳩より数倍大きい。

 雀の姿をした守護鳥だが、スイカと同じくらいあった。

 リンゴと同じくらいの大きさである鳩の守護鳥は、すっかり萎縮する。


 それから数年経ち――先に聖女に喚ばれたのは、雀の守護鳥であった。


『じゃあな、後輩』

『い、いってらっしゃいませ、先輩』


 鳩の守護鳥は、先輩である雀の守護鳥を見送る。

 自分もそろそろ喚ばれるのではないか。

 そう思っていたものの、何年経っても喚ばれることはなかった。


 そうこうしているうちに、孵化してから十八年も経ってしまう。

 雀の守護鳥と別れてから、十年以上も経った。

 何かおかしい。いや、絶対におかしい。


 鳩の守護鳥は聖女の気配を探る。すると、微弱な反応を得た。

 これだと確信し、必死になって掴む。

 それは、召喚魔法であった。

 術者は美貌の少年。彼は聖女ではない。

 鳩の守護鳥は必死になって翼をはためかせ、聖女を探す。


 そして――ついに出会った。

 窓枠に止まり、目を凝らす。

 魂が、輝いていた。間違いない。


 喜びのあまり、聖女の頭上に着地してしまった。

 興奮していて、判断を誤ってしまったのだ。


『よかった!!』


 鳩の守護鳥は安堵する。これで、役目を果たせると。

 その後、鳩の守護鳥は〝ハト・ポウ〟と名付けられる。


 困ったことに、主人であるイルゼは聖女であるという自覚がまったくなかった。

 ハト・ポウがどれだけ訴えても、言葉を理解してもらえない。

 彼女が聖女であると自覚しない限り、意思の疎通はできないのだ。


 ハト・ポウはイルゼに乞われ、聖女の力を借りて奇跡を起こす。

 イルゼはハト・ポウはすごいと絶賛するものの、まったくの的外れである。

 奇跡の力は、イルゼの力を借りただけに過ぎない。

 いくら訴えても、欠片も通じていなかった。


 さらなるピンチが、ハト・ポウを襲う。

 リアン・アイスコレッタの登場である。

 全身邪気まみれの彼は、一歩間違えば魔王になるほどの凶悪な存在であった。

 彼の近くにいるだけで、気分が悪くなる。

 けれども、イルゼはピンピンしていた。さすが、聖女様だとハト・ポウは絶賛する。

 彼と行動を共にするなんて、最悪である。どうか考え直してほしいと訴えるも、腹が減っているのかとパンをくれるばかりであった。


 邪気がイルゼに悪影響を及ぼすのではないか。ハト・ポウは戦々恐々していたが、リアンに変化が訪れる。

 リアンの邪気は、イルゼと行動するにつれて薄くなっていき、最終的には消えてしまった。イルゼが、祓ってしまったのだ。

 感謝しかないと、ハト・ポウは涙を流しながら思う。

 邪気がなくなったリアンであったが、相変わらずハト・ポウは苦手だった。

 相性の問題なのだろう。


 旅するなかで、とうとうイルゼは聖女と自覚する。

 ハト・ポウとも意思の疎通が取れるようになった。

 これまで頑張ってくれたという労いの言葉を聞いた瞬間、ハト・ポウは踊り出したいほど嬉しくなった。


 なんとか事件も解決し、めでたしめでたしである。


 後日、ハト・ポウは先輩と再会した。

 彼は聖女カタリーナの守護鳥だったのだ。

 体は一回りほど大きくなっていた。のし、のしっと貫禄たっぷりな様子でやってくる。


『おう、後輩、久しぶりだな』

『お久しぶりです、先輩』


 雀の守護鳥は、〝デカ・チュン〟と名付けられ、カタリーナに仕えていたのだとか。

 再会を喜び、抱擁しあう。


『これからいろいろあるだろうけれど、聖女様をお助けするのが俺らの仕事だ。頑張ろうぜ』

『はい!』


 互いに健闘をたたえ合い、これからも守護鳥として誇り高く生きようと誓い合ったのだった。

本日から、新連載が始まります。

『スライム大公と没落令嬢の案外しあわせな婚約』という作品です。

よろしくお願いいたします。

https://ncode.syosetu.com/n5708ha/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ