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平手打ち

翌朝、俺が起きて二階の窓からなにげに外を見ると、クリスが馬を準備していた。

 俺は窓を開けると、クリスに話しかけた。


 「おはよう、クリス」


 クリスは見上げながら俺の部屋を見つけると挨拶を返す。


 「おはよう。勇人」

 「今日は馬車じゃないのか?」

 「ああ、宿屋の主人によると、例の洞窟へは道が狭くて馬車は通れないんだと。だから馬を貸してもらった」

 「もしかして、俺も馬に乗るのか?」

 「当たり前だろ。ちゃんと人数分用意したぞ」


 自慢じゃないが、俺は生まれてこの方乗馬なんか一度もしたことがない。


 「あのさ」

 「なんだ?」

 「俺、馬に乗ったことが無いんだが」

 「え・・・?」


 クリスはそのまま固まった。


 「お前、一度も馬に乗ったことがないのか?」

 「自慢じゃないが、一度もない」


 クリスは呆れたような顰め顔をして頭を掻く。


 「確かに自慢にならんな・・・ったく、お前の世界ではどんな低レベルの生活してるんだ?それじゃ不便で仕方ないだろう」


 クリスは大真面目な顔で言っているが、俺にとって不便なのは寧ろこっちの世界のほうだ。だが、今はそんな話をしている場合じゃない。


 「とにかく、一回馬の乗り方をレクチャーしてやるから朝食後に降りてこい」


 俺は朝食を済ませるとクリスに言われるまま厩舎まで赴いた。俺の乗馬の出来次第で出発の状況が変わるため、リサとティナの二人も見学に来ている。


 「馬の横に来て乗ってみろ」


 クリスにそう言われるまま横に立つが、実際に並ぶと馬体はかなりデカイ。こんなモノにどうやって乗っていいのかもわからない。


 「乗り方がわからないのだが・・」

 「ふう・・・じゃあ私がお手本を見せるからよく見ていろ。まずタテガミと手綱を左手でしっかり掴んで、右手は鞍の右側淵を掴むんだ・・・」


 クリスに教えられた通り俺は見様見真似でなんとか乗馬に成功する。


 「鞍に跨ったら姿勢はまっすぐ、手綱は短く緩めに持って、腹を両足で強めにポンとければ動くから」


 クリスに言われたとおりに腹を蹴ると馬はユックリ動き出した。


 「止める時はどうするんだ?」

 「両手で手綱を引けば止まれの合図だ」

 「こ、こうか?」


 俺は馬を停止させるため、手綱を思い切り引っ張った。


 「バ、バカ!引きすぎだ」


 ―ヒヒーン―


 クリスの声も虚しく、馬は大きくいななくとそのまま前足を大きくあげ、俺を振り落とした。


 ―ドスンッ―


 「イテテテテ・・・」

 「どうどう・・・落ち着け、悪かったな」


 痛がる俺そっちのけで、クリスは手綱を取って馬をあやしている。なんだよ、俺はどうでもいいのか。


 「ふう・・・リサ・・・どうします?」


 クリスがリサに指示を仰いだ。


 「このまま時間を潰すこともできないし、勇人君は私の馬に乗せていくわ」


 見兼ねたリサがクリスにそう提案する。


 「リサの馬にですか?」

 「仕方ないわよ。ティナの馬は食料品、クリスの馬には武器防具を一緒に運んでもらうんだもの。私の馬が一番身軽だわ」

 「確かにそうですが・・・」


 こうして俺はリサの馬に同乗して洞窟へ向かうことになった。



 「じゃあ、勇人君先に乗って」


 俺は言われるままに馬に乗る。


 「そしたら鞍の前方に寄って鞍の前縁に掴まっててね」

 「こうか?」

 「そうそう、上手よ」

 「リサ、勇人さんが前だと前方が見づらいでしょうから、これをリサの座る鞍に乗せておきませんかかニャ」


 そう言ってティナが厚めのクッションをリサの座席に敷いて固定した。


 「ありがとうティナ。助かるわ」


 リサはクリスとティナの補助を受け、俺のうしろに悠々と騎乗する。リサの騎乗後に、ティナとクリスが各自の馬に乗り準備が整うと、そのまま三頭の馬で出発した。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 リサはうしろから俺を抱きかかえる形で手綱を握っている、しかも狭い鞍の上でスペースが限られているために、自然と躰が密着しているのだ。

 手綱を握るリサ自身は騎乗に集中しているため、そのことにあまり気がついていないようだった。


 当初は俺の両腕にリサの腕から体温が伝わることがわかる程度だったが、やがて俺の背中になにやら柔らかい二つのフニョンフニョンしたものが触れてくる。

 なんだかクッションのようにも思えるその柔らかな物体は、リサの躰が押し付けられる都度に跳ね返すような弾力を増してポニョンポニョンと交互に俺の背中をマッサージしだす。


 こ、これは・・・もしかして・・・いや・・・もしかしなくてもリサのオッ〇〇・・・。

 この時点で俺の意識はリサのオッ〇〇に集中しており、すでに景色を楽しむとかそんな余裕はなくなっていた。リサ、ティナ、クリスの三人は、道中、なにやらお喋りをしていたが、なにを喋っているのかさえ俺にはわからなかった。


 落ち着け、落ち着くんだ・・・俺。こんなモノはただの肉と脂肪の塊にすぎない。色即是空・・・空即是色・・・


 しかし、俺の背中に触れるその柔らかな弾力の中に、さらにコリコリとした突起物の感触が感じられる。

 この感触はリサの〇首か・・・!


 俺の心臓の鼓動と呼吸はさらにヒートアップした。

 ヤバイ・・・。

 そう思った俺は、リサから押し付けられるモノから躰を逃がそうと無意識的に前のめりになるが、狭い馬の上なのでバランスを崩してそのまま落馬した。


 「キャァ・・・」


 リサが悲鳴を上げる。


 「勇人どうした?」


 クリスはすぐさま馬を止めて俺に駈け寄って助け起こす。


 「顔が赤いぞ、熱でもあるのか?宿を出発するではなんともなさそうだったのに・・・」

 「いや、大丈夫だ」


 リサが心配して俺に駆け寄る。俺の視線はリサの胸に注がれたが、またすぐに顔を赤くして顔を叛けた。

 それを見たクリスがなにかを察したらしく、リサにそっと耳打ちする。


 ―パンッ!―


 リサは片腕で胸を隠す仕草をし、顔を真っ赤にしながら俺の頬を思い切り叩いた。


 「馬鹿ぁ」

 「痛ってぇ・・・自分から押し付けといて叩くことないだろ」


 俺は赤く腫れた頬をさすって呟く。


 「押し付けてなんかいないわよ、手綱が取りにくいから躰を前に出したらチョット胸が当たっただけじゃない!なに興奮してんのよ!」

 「男なんだから仕方ないだろ」

 「もう知らない!」


 リサは顔を膨らませてそっぽを向いた。

 だが、このまま目的を果たすことができないのも困る。クリスの提案もあり、リサは用意していたハードレザーアーマーを装着して騎乗することになった。そのため、俺の背中にはゴリゴリとした固い革の感触しか感じられなくなる。


 「背中が痛いんだけど・・・」

 「自業自得よ」


 リサはまだ少し怒っているようだった。こうして、俺の至福の時間は終焉を迎え、洞窟に着くまで、味気ない時間を過ごすことになった。

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