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エリザベートの魔法力

翌日・・・


 ブランチの準備にティナが現れるころ。その準備の最中、俺は助けてもらったお礼を述べることにした。


 「おはようございますニャ。勇人様」

 「おはよう、ティナ」


 ティナは窓のカーテンを開け放つ。レースのカーテンのほうは俺が取り外してしまったため取り換えてあるらしい。


 「今日はいい天気ですニャ」

 「そうだな・・・」

 「ではブランチの準備をいたしますニャ」


 そう言ってブランチの準備を始めるティナに俺は声をかける。


 「あのさ、ティナ」

 「ニャンでしょう?」

 「この前、チンピラに殺されかけてたときに回復魔法で助けてくれてありがとう。おかげで命拾いしたよ」


 一瞬、食器を並べるカチャカチャとした音が消える。


 「い、嫌ですニャア・・・そんな当然のことでお礼を言われるなんて人間らしくないですニャ」


 ティナは指で頬のあたりをポリポリと搔きながら照れていた。


 「普通はお礼はしないものなのか?」

 「殆どの人間は私たち亜人にお礼なんか言わないですニャ」

 「そんなもんなのか」

 「この国に限らず、私たち亜人は平等に扱われるなんてことはまずないですニャ」

 「ふーん、でも君はここのメイドとして雇われているし、君が昨日呼びに行ったあの近衛兵長・・・名前なんだっけ?」

 「クリスですかニャ?」

 「そうそう・・・そのクリスさんだって近衛兵長なんだろ?どのくらいの地位か知らないけどさ・・・」


 ティナはしばらく沈黙したのち答えた。


 「ここの王宮だけ特別なんですニャ」

 「特別って?」

 「他の国では私たち亜人はここまでの待遇にニャることはないんですニャ。ニャかには奴隷として扱うところもあって、奴隷狩りの対象ですらあるんですニャ」

 「亜人対象の奴隷制度があるのか・・んでここの王様はそういう政策はとっていないと?」

 「王様というよりは姫様の尽力に拠るところが大ですニャ。姫様は亜人が差別されることのニャいようニャ平等な国造りを目指しているんですニャ」

 「この国そのものの方針ではないのか」

 「たぶん、この国の殆どの人間は姫様のお考えには納得してニャイと思われますニャ。ですから、姫様がいニャければ私とクリスは王宮から追放されることにニャるでしょうニャ」


 なんか、この世界の闇の部分を垣間見た気がする・・・。


 「ニャので、私たち亜人にとっては姫様のようニャかたが王位についてくれると非常に助かるのですニャ。そのためにも勇人様にはぜひ頑張ってほしいのですニャ」


 ティナはしみじみと王位継承についての自分の意見を述べた。


 「でもまあ、お食事が冷めてしまいますので、先に済ませてしまいましょうニャ」


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ティナの勧めもあり俺はブランチを済ませると、しばらくのあいだお茶を飲みながらボンヤリと窓の外を眺めていた。


 「また逃げ出す算段でも考えておられますかニャ?」


 ティナが冗談めかしに訊く。


 「いや、もうそんなつもりは全然ないよ。ところでさっき、リサを王位につけるために俺に頑張ってほしいと言っていたが、そのことでリサからなにか聞いてないか?」

 「なにをですかニャ?」


 俺は昨日リサから聞いた話をそのままティナに伝えた。


 「つまり、勇人様には従者サーバントとしての能力が備わっていニャいということですかニャ?」

 「そういうことだ」

 「う~ん、難しいですニャア」


 ティナは考え込んでいた。


 「リサが言うには従者サーバントにかかる補正値は召喚した術者の魔力に比例するとのことなんだが、リサ自身の魔力が相対的に弱いってことはないんだろうか?」

 「それはあり得ませんニャ」


 ティナはキッパリとそう言い切った。


 「なぜそう言い切れるんだ?」

 「魔法を使うとき魔法陣が現れるんですけどニャ、その魔法陣の現れ方は術者の能力によって違うのですニャ」

 「具体的には?」

 「私の場合は普通に魔法陣が現れておしまいですニャ」

 「リサの場合は?」

 「姫様の場合は、魔法陣が普通に現れるだけではないですニャ、さらにそれが上昇して二重に重なるんですニャ」

 「俺にはよくわからんが、それって強いのか?」


 俺がそう訊くとティナは語気を強くして言う。


 「凄いなんてモンじゃありませんニャ。ハッキリ言って他の王位継承候補たちでは足元にも及ばニャいくらい強いですニャ。勇人様を探しに行ったときニャンかアドルフとかいう嫌ニャ奴が姫様の魔法陣を見てビビッて逃げ出しましたからニャ」


 ティナがさも自分のことのように自慢気に話すのが面白かった。だが、その強さの感覚がイマイチわからん。


 「具体的に言ってくれないか?」

 「そうですニャア・・・例えば、勇人様がモノをニャげたとしますニャ・・それが三倍の速さで投げられたらどうですかニャ?」


 仮に俺がボールを本気で投げれば90㎞程度かな・・・それが三倍なら270㎞か、凄いな・・・当たり所が悪ければ死ぬレベルだ。


 「凄いよ」

 「フッフッフ・・・ですニャ・・・」


 俺がそう言うとティナはしたり顔で笑う。


 「では、さらに二倍の六倍では?」


 540㎞・・・当たったら確実に死ぬな・・・


 「さすがにそれはヤバすぎだろう・・・」

 「そのヤバい力が姫様の能力ですニャ」

 「マジか・・・」

 「ちニャみに、最初に言った三倍という数字は、他の王位継承候補がそれぞれの従者サーバントに補正値として通常与えられる数値ですニャ。ただ、その辺の上級貴族が呼び出した従者サーバントには殆ど補正値が無いか二倍にも満たない補正しか掛かりませんニャ。まあ、そもそもペット並みの小動物しか召喚されませんけどニャ」


 ティナの話が本当なら問題はリサ自身の能力ではなさそうだ・・・・。


 「ところでティナに少し魔法のことを教えてほしいんだけど」

 「魔法ですかニャ?うーん・・・」


 ティナが難しい顔をする。


 「どうした?」

 「いや、あまり詳しくはニャイんですニャ」

 「ティナの知っている部分だけでいいよ」

 「それでしたら、知っているところだけお教えいたしますニャ」


 ティナはそう前置きして話を始める。


 「魔法にはいろいろな系統があるらしいですニャ。ただ私は自分の魔法しか知らないですニャ」

 「回復魔法は使えるよな?」

 「はいニャ、回復魔法は一般的に神聖魔法にあたりますニャ」

 「一般的というと神聖じゃない回復魔法もあるのか?」

 「ドレインという回復魔法ニャンかが穢悪あいあく魔法にあたると言われていますニャ」


 穢悪あいあく?なんか難しい言葉が出てきたな。


 「どんな魔法なんだ?」

 「残念ニャがら私には効果についてはよくわからニャいですニャ。一般的に穢れ魔法と呼ばれ忌み嫌われていますニャ」

 「ふむ・・・他には?」

 「他には四大属性魔法にニャりますが、詳しいことは私以外の人に尋ねてほしいですニャ」

 「そっか、ありがとう」

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