番外編④ 秘密特訓 (ショートショート : グラジオラス)
とある日。僕とグラジオラスさんはというと、森の中にある開けた空間にいた。
「ではいきます!」
言葉の後、僕は頭上にいたライムを全身に纏うと、実体化した植物を少しずつ身に纏っていく。
いったいこそこそと2人でなにをしているかというと『歪化』の練度を上げるために、秘密の特訓をしているのである。
現在『歪化』はすでに粗方形になっている。しかし唯一うまくいっていないのが、キャノンフラワーの種の射出、その精度であった。
僕は少しずつ植物を身に纏っていき、右手に中空で円錐台型の大きな装飾を、全身を黒の鎧で纏ったところで準備は完了した。
「よし! いつでもこい!」
「はい……ッ撃ちます!」
言葉の後、僕は円錐台型の大きな装飾をグラジオラスさんの腹部辺りへと向けると、キャノンフラワーを装飾内部へと装填。ライムにお願いし、実に衝撃を与え──凄まじい勢いでキャノンフラワーの種を発射した。
「【剛体】ッ!」
グラジオラスさんは言葉と共にスキルを発動すると、射出した種を両手で受け止める。
「ぐぅぅー!」
「だ、大丈夫ですか!」
「ガハハ! なんともないさ! それにしても今の狙いは良かったな!」
グラジオラスさんはこちらに歩み寄りながらそう言った後、グリグリと頭を撫でてくれる。
「えへへ。ありがとうございます!」
実際今の狙いは正確だった。特にこれまで直撃させることができなかったことを考えるとその差は明らかである。
「よし! 今の感覚を忘れないうちにもう1回やるか!」
「……はい! よろしくお願いします!」
──こうして僕たちの秘密の特訓は続く。