109、side宮廷歌姫の歌声③
つおい(╹◡╹)
「ハッ、ハッ、ハッーーー」
走って走って走って走って走って走って走って走って走る。
全速力で走る、私は止まらず走り続ける。
物にぶつかるも走る、全身の筋肉は痛みを訴え、肺は酸素をもっとよこせと暴れていた。
それを全て無視して走る、全身全霊で走り続ける。
しかし、あまり運動が得意でない私の体はそう長時間走り続けられるわけもなく壁に寄りかかる……。
「おい、誰が休んで良いって言った?」
「ーーーッッッッ??!!?」
いつの間にか接近していた男、背中を浅く斬りつけられ、鮮血が夜空に舞い、月の美しさを引き立てる。
「ーーッッッ」
地面に転がされるも、痛みに耐えながらその勢いを利用してなんとか追撃の刺突を回避、なんとか立ち上がり前へと走って逃げるーーーー今のは私が躱したわけじゃない、ただ相手が躱させてやっただけだ、逃げたところで生き残る希望も相手を倒せる望みも無い………だけど立ち止まるのだけはしたく無い!!
「ーーーハッ、ハッ、ハッ、ハッ」
「頑張るじゃねぇの、思ったより楽しめそうだぜ」
ネズミを痛ぶる猫のように、狩人は私という獲物を逃さぬよう遠巻きに追ってくる、そして獲物が休んだ瞬間、馬に鞭を入れるが如く斬りつけ、走らせる、それが何度も繰り返され、身体中に浅い切り傷を負う私。
どんどんその傷口は増えていき、キャンバスに白いところが無くなったかのように、身体に新しい傷をつけられるところがなくなると、今度は既にある傷に寸分違わぬ斬撃を見舞ってくる、傷をほんの少しだけ、だが確実に深く抉ってくる。
正直新しい傷をつけられるより痛い………。
………だがそれでも私は足を止めない、走る、走って走って走って走って走る。
(………クソが、心を折ってから殺してやろうと思ったのに………なぜ折れねぇ)
「………チッーー、思ったより諦めが悪いな、おい、わかってんだろ?俺からは逃げられないし、倒すこともできない、お前が死ぬことは確定的に明らかだ!!、醜く生まれちまったなら、せめて美しく死ぬべきだと思わねぇか!!?」
「ーーーなら弱者を痛ぶる醜悪な狩人のアンタから美しく死ね!!!」
「ーーーこのクソアマが!!」
「ーーーガハッ!!!?!」
せめてものの意地で言い返す、血が頭に上った相手は私をさっきとは段違いの威力の蹴りをかましてくる。
ーーー体から嫌な音が鳴り響く、どうやら肋骨が二、三本折られたようだ。
「ゴフッーーハッーーハッーー」
「………たく、思い上がんなよ、お前が今呼吸できてるのは俺の気まぐれだからな?、あんまり俺を怒らせるな、ブス」
「ーーーハッ、アンタも似たような風貌じゃない、目糞鼻糞どんぐりの背比べ、それとも自分はイケメンとでも思ってるの??、滑稽だわ」
「………どうやら唯一の長所の喉から失いてぇようだな……ーーーーー死ね!!!」
「ーーーッッッッッ!!!?!」
トドメとばかりに大上段に剣を構え、振り下ろされる、私は咄嗟に目を瞑る、ーーーー刹那、何か硬質な金属同士がぶつかり合った時のような高音が鳴り響く。
「ーーーったく、とんだおてんば歌姫だぜ………」
「だ、誰だテメェ!!」
「………そうだなぁ、俺はお前を八つ裂きにする者さ」
目を開けると、鎧武者のような姿の竜人が手に持つ刀で相手の剣を受け止め、薄く笑いながら軽口を叩く。
つおい(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾




