風と 共に揺れる心は 不青春
今、目の前にはホワイトボードにぶら下がってる少年が居る。
足だけでぶら下がってるが、そんな事はどうでも良くないけど今はいい。
気になるのはこの少年は何者なのかとどうやって三階のこの部屋まで入って来たか
それだけ。
そもそもここは県の金で成り立ってるちょっと寂れてるけど、立派な高等学校だぜ?
少年が入れる理由は無いはずなんだけど
う〜ん………
「キミ……疲れない?そんな事したら」
眠ってる様な少年に酷く上から目線なアクセントで話かけてみる
「ん。ちょっと疲れた。じゃ降りよ」
半目の少年はどうやったのか全く分かんないぐらいにすごい降り方でホワイトボードから降りた。恐らく空中で一回転はしたと思う
「あ、ご紹介遅れました。僕は……少年?
って奴なのかな?だから少年でいいや」
「いや……どうみても少年だよ。何かおかしいぞキミ」
しまった!と、言うべき顔で少年は口を抑えた。やはり変だ。何か変だ
「つーかキミ親は?何処から来たの?」
「それはね」
今度は右手の人差し指を恐らく柔らかな唇に当て、溌剌と笑う。なるほどナイショと言う訳だ
「あなたこそ何してたの?だーれも居なくなった教室で一人」
「あっ……それは」
僕も同じ様にナイショとやるつもりだったが、数歩進んだ少年は右手を両手で掴んで、
半ば強制的に降ろさせた
「まねっこはだめー。いって」
「う、うう……」
「その……勉強してたんだ」
「勉強?えらいじゃん」
「で、隠してた事実は?」
少年はゆっくり左右にスキップした
「その……あれだよ、学年一位になったら……告白するんだっ」
「告白っ!?!?!」
せ、接吻でもするかの近さだ。危ないよ、少年
「ぜったいふられるーーっ! と思う」
「失礼な。分からんだろ?」
「いんや、ふられるね。なぜならあの子はもう……あっ!」
あっ! って嫌な予感がする語尾だ。でも今更何聞いても
「………ききたい?」
「うん」
そうして少年は急にしゅんとして、ゆっくり
あの子の事を話し始めるのだった
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「そんなあ……なんでそんな………」
「僕に言われてもねえ。僕が知りたいくらいだよ」
少年の話は信じたくも無い真実だった。告白しようとした子にはもうかっこいい男の子が付き合っていて、全国模試でいつも三位以内で、おまけに父親は県議会議員。出来すぎたぐらいに真実だーーっああっ………
「はぁ……なんだか天気まで曇ってきたね。
キミも早く帰った方が」
「むり……かなしい気分だもん」
勝手に話し出して、悲しい。とは……
自己中?んーまあこのぐらいの年齢なら仕方なしか?
「………ばかっ」
わっと。風?突然風が?何故?
「余り感情は出すなって言ったでしょうが………ん…ま、たまにはいっか」
窓に……少女? 背中から察するにこの少年と
同じぐらいの年齢だろうか
しかし、晴れた。晴れたな
「むぐっ……! あぶないあぶないっ!でもどこいってたのさー?」
「ちょっと刑務所にね。言伝を」
「言伝か〜好きなんだね相変わらず……むぐっ!」
「口が軽い………」
晴れたと思いきや、風が止んだ。少女が来て
からか
「ところでそこのおにーさんは?」
髪をふわりと靡かせて、聞いた
「おにーさんはおにーさんだよ。ところで」
「聞いて聞いて!このお兄さん、告白しようとしたら相手がいたんだよー!」
がっ……?! おま…なにを……?
「でもおにーさんはすごいんだ!ほら、見た目は落ち込んでるけど……こころはもう前にむいてるんだよ!」
え……?
「確かに前には向いてるみたいだねえ。前にはねえ」
「でしょ??」
「でもさ身体が後ろ向きなんだよ」
「え?」
「え?」
「だって頑張ったんだもん、そりゃ辛いよ。
だからココロは無理して前向きなんだけどまだ身体はボロボロなんだよ」
その時、突然立ちくらみした。そう言えば二日ぐらいマトモに飯も食べてないし、マトモに寝てなかった………
「ほらね。仕方ない……」
「やったげてって?おっまかせー!!」
少年は輝いた。意味が分からないが、とにかく輝いたのだ。にっこりにっこり笑って
「こんなもんかなー?どう?」
「うん。大丈夫」
すっと、俺の疲れは吹きとんだ。なんて暖かい少年か。彼が元気だと確かにこっちまで元気になってくる
「お兄さん、こんな時は逆に嫌われてみた方がいいかもよ。 じゃ」
「ばーいばーい!!」
二人の子供は突然、目の前から姿を消した。
夢でも……見たのだろうか
━━あら。 流行りの優等生くん。何してるの
あっ……!しまった! 好きだった人がなんで
こんな時にっ! そうだ
「え……ホワイトボードに?え…えええ!?」
ホワイトボードにでかでかと書いてやった単語は"キミが好きだった"これである
「てかなんで彼氏の事……きゃっ」
彼女のスカートが突然、風で舞い上がって
目の前でパンツが見られてしまった。
白いくまさんパンツ……なんだ
「あ、アンラッキースケベだね……わふっ!」
「ばかーっ!!!死ね! 大っ嫌い!!」
黒板消しを、僕の顔にぶち当て、彼女は去った。去ってく途中でも風は吹いてたが、必死でスカートを押さえて頑張ってる。
しばらくして、これでいいんだ。みたいな気持ちになったので帰る事にした。太陽は相変わらず僕を照らして笑うように輝くのだった
━━━━彼がそこを去った後に彼女はこっそり帰ってきた。
そして、ホワイトボードに小さく書くのだった
"ごめんね"
勿論、すぐ消した。しかし、彼女の眼にはさっきの "お前が好きだった"と今消した
"ごめんね"がしっかりと焼き付いていたのだった
「くまのパンツは辞めて、うさぎのパンツにしようかな」
そんな事を呟いて、彼女は本当に去ったのだった