アイリスの忠誠
「アイリス。私はあなたを信用する。」
私はいい加減、心を許せてそばに居てくれる誰かが欲しかった。
「いきなり何を?」
アイリスを自室へ連れ込み、私は決意を固めた。
「アイリス、受け止めて...!」
私は変身を解いた。
「えっ、はっ、ちょっ.....っと、危ない...」
なんとかお姫様抱っこをしたアイリス。
「えっ、と...?クロスチョーカーさん?」
「そうよ。私が“クロスチョーカー”の本体。どう?驚いた?」
アイリスが抱き抱えたまま目を丸く見開いた。
「驚きましたよ...そりゃ...」
黒髪黒目で右目を髪で隠している少女があの“クロスチョーカー”だなんて思いたくないよね。
「アイリス...私と共に来てくれない?あなたなら信用出来ると思ったのよね。」
年齢不詳、性別不明のクロスチョーカーは、
齢12、性別女だった。
「アイリス、歳いくつ?」
「14です。」
「歳近い!あなたみたいな人を探していたの。私があなたを守るわ。これ以上ない護衛でしょ?」
アイリスは思った。この人は僕自身を必要としてくれる と。
アイリスにとってこれ以外に忠誠を捧げる理由など必要なかった。
「このアイリス。クロスチョーカー様に忠誠を捧げます。どうかお側に置いてください。」
左胸に右手を、右手を背に、片膝をつき忠誠を誓った。
□■□■□■□■
「じゃあ、みんなに紹介しなきゃね。」
私はすぐにいつもの装備をまとった。
まず会いに行ったのはメイスとフィルスのコンビ。
コンコンっ───
「メイス、クロスだ。」
ガチャリ.....フィルスが扉を開ける。
糸目のフィルスはまだ私を警戒している。
「ようこそ、クロス様。長話ですかな?」
白銀の長髪をサラッと流し軽くお辞儀をするメイス。
真っ白なスーツに真っ白で豪華なマントがよく似合ってる。
白すぎてむしろ眩しい。
「いや、私の部下の紹介に来ただけだ。
間違ってメイスの魔法を飛ばされたらたまったもんじゃないからね。」
そう置いて、
「私の直属の部下のアイリスだ。コードネームはチェマー。よろしく頼むよ。」
アイリスも軽くお辞儀をする。
「はじめまして、アイリスくん。私はメイス。コードネームはシロバラ。こっちは部下のフィルス。コードネームはユキバラだ。」
お互い自己紹介を終え、私らは部屋をあとにした。
「メイスは氷魔法を、フィルスは氷剣士。悪い奴ではないが、初対面には冷たいんだ。慣れてくれば優しくしてくれるよ。」
少しメイスとフィルスの威圧に怯えていたアイリスを宥める。
次は...っと、
また扉を叩く。
「ディバル、私だ。クロスだ。」
ガチャ...と音をたてて扉が開く。
「ディバル様、クロス様がお見えですが...「クロス様!?」...どうぞお入りください。」
赤髪短髪赤眼のもう全身真っ赤の見るからに熱い男。
一神のディバル。コードネームはレッド。
「クロス様!どんな御用で!!」
いつも笑顔で迎えてくれるが、ぐいぐい来られると少し困る。
「ディバル、私の部下を紹介しに来た。」
「部下?」
ディバルがアイリスに目を移した。
「私の部下のアイリスだ。よろしく頼むよ。」
「アイリスです、チェマーとお呼びください。」
アイリスが頭を下げた。
「ふんっ、俺はディバル!そんでこっちは「部下のティラユールこと、リブです。」..おい、...俺の言葉遮ってんじゃねぇぇぇぞゴラあぁぁぁぁぁ!!!!」
「お黙り下さい、ディバル様。その脳筋頭をぶち抜きますよ。」
いつもの事ながら喧嘩が始まったので退散する。
「あの二人はほっといていいよ。いつもああだから。」
「...あ、はい...、。」
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「ミレ姉、いる?」
「ん?...あ、アリスー!クロっち来たよー!!」
ミレアリスことミレ姉の部下のユジャに呼んでもらった。
「会いたかったよー!!クロちゃん!!」
「ミレ姉、私もだよ!」
いつもの鎧姿で言ってしまったものだから、怒られた。
「その姿で言われても嬉しくないんだけど!!」
五神の中でも、私の姿を知る数少ない者。
私は変身を解き、ミレ姉に抱きつく。
心は許せるけどずっとそばにいてくれる訳では無いミレ姉はやっぱりアイリスとは違う。
「ミレ姉、私の部下のアイリス。仲良くしてくれる?」
「あったり前じゃない!やっと信頼出来る部下を持てたのね、よかったわ!アイリスくんね、私はミレアリス。よろしくね。」
「アイリスです。これからお世話になります。」
ミレ姉とアイリスが握手をする。
「アリス、私の存在忘れてねーか?
私はユジャ。アリスの部下だよ。なんかあったらいつでも頼れよ。」
やだかっこいい。アイリスも頭を撫でられ少し嬉しそうにしている。
「ミレ姉、私らはもう行くわ。またお茶しましょ!」
ミレ姉からアイリスに抱っこしてもらった。
そのままミレ姉の部屋を後にした。
抱っこされたまま次へ。
私は魔法の影響かなんなのかわからないけど身長が120cm程で止まってしまっている。
だからアイリスでも抱っこができるというわけだ。
「ここ!アイリス止まって!」
「あ、はい。開けても...?」
「いいよ!ダウロー!!!」
叫んだら勢いよく扉が開いた。正確に言うなら爆風によって吹っ飛んだ。
「ゴホッ、...ゴホッゴホッ.....あぁ、グ、グロズざま...。」
ダウロの部下のウミユリも吹っ飛んできた。
「ふはぁ、ウミユリ今日も飛んだなぁ!」
爆煙の中からまだ少年と言うに相応しい人が出てきた。
「あれ、クロじゃん。なぁにしてんの。」
抱えられてる私に目線を合わせてくれるダウロ。
私の親友。
「ダウロ、ダウロ、あのね!私の部下のアイリス!仲良くしてね!...でも、実験に巻き込んだら私が飛んでいくからね?」
「あっはっはっ!!やっぱクロはおもしれぇなぁ!俺はダウロ。見ての通りって見えねぇか。ウミユリ!」
えっ って顔をするウミユリ。
「まったく、ダウロ様が散らかしたんじゃないですか...。」
そう言いながら魔法で元に戻していくウミユリ。
黒髪黒目の頭にターバンを巻いた糸目の少年。
1番年が近かったから仲良くなれた親友。
「ダウロ、これからもよろしくね」
「おうよ。いつでも頼れよ。」
こうして私たちは五神全てに挨拶を終えた。
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「はぁぁぁぁ...疲れたと言うか.....なんて言うか.....」
自室というかアイリスとの共用部屋に戻り、ベッドに横になる。
「クロス様は僕以外に部下はいないのですか?」
「いないよォ...。みんな年が遠いから...。と言うか、ピンとこなかった。」
眠そうに答えたクロス。
目はもう完璧に閉じている。
「僕で、よろしいのですか?」
パチリと左目をあけ、アイリスの方を見る。
「アイリス、左手を拳にして前に出して。」
「?」
訳がわからないまま、言われた通りに左手を差し出すアイリス。
私は寝返りを打ち、右手を握りしめアイリスの手につける。
「我は汝のもとに、汝は我が元に。我が名の元において、ここに契約する。アイリスを我がものに。」
アイリスの手の甲に、そして私の手の甲に同じ紋章が現れた。黒い十字架の模様。
「私らの契約。私はお前を選んだ。それが事実で紛うことなき真実。これでは足りないか?」
アイリスは目に涙を浮かべ、呟くように言った。
「ありがたき、...幸せであります...。」
左手を握りしめるようにして。
アイリスくんとダウロくん大好きです。
ディバルも好きだしミレ姉も何気フィルスくんも好きです。もうみんな大好きです。
こんな世界に生まれたかった...。