朝の光がさしてきた
今回は閑話休題的に少しテイスト変えようとしたけど。。。
目が覚めた。
朝の光がさしてきた。
甘い香りがする。
ん?鼻先にむにゅむにゅするものが当っている。
見上げるとアンの寝顔。
なんと、アンの胸に抱かれて寝ていたのだ。
そういえば、昨夜は転生祝いのディナーをしたんだっけ。
テーブルに座っていると、ダンディな執事がやってきて、次々と料理や酒を出してくれた。
え?どこから来たの?執事なんていたの?
「式神よ。ここにはいっぱいいて、家の掃除から料理、庭や牧場の手入れまでなんでもやってくれるのよ」
アンはこともなげに言う。便利なもんだな。
オレには小さな子羊のサイコロステーキを出してくれた。
ほとんど味付けされてないから、実に美味い。
アンはメインの子羊のステーキを美味そうに食っている。
それ以外にもスープやサラダなんかいろいろあるみたいだ。
アンの酒はソルティドッグ、オレはマルガリータ。
共に本来はスノースタイルなのだが、イヌは塩がダメなのでスノーは付いていない。前世でも省略していたのでノープロブレムだ。それにショートカクテルだからイヌでもピチピチ飲める。
毎日こんな食事ができたら幸せだなー
「だから言ってるでしょ、ここは別荘なのよ。これからは冒険の日々なんだから。今日は特別なのよ」
はいはい。修行と冒険に励みますよ。
ところで、これから出かける秋田って、江戸の東、
つまりカムイヌが追放された「エドンの楽園」って江戸のこと?
「そんな都合のいい話はないでしょうけど、そうかもしれないわね」
相変わらず真実なんてそんなもの、というわけか。
そんな感じで、静かに前世では共に味わえなかった豪華なディナーを楽しんでいた。ディナーといえば、ワーグナーを聞きながらチクワを食べる「チクワーグナーの祭典」ぐらいだったからな。
イヌの分際でマルガリータを3杯も飲んだのでだいぶん酔ってきた。
アンも酔ってきたようだ。トロンとした眼で言う。
「アナタ、モウネマショウヨ」
えっ?山のあなあな…
考える間もなく、アンに抱き上げられ、ベッドに入り、寝てしまった…
…でも、アンの胸は気持ちいいなー、幸せだなー
ムニュムニュ、ツンツン、ペロペロ…
「何するのよ」
キャイーン!
ベッドの外に放り出され、床にたたきつけられた。
「朝ごはんが済んだら修行だからね」
朝食はアンが卵かけごはんと味噌汁に香のもの、オレは猫まんま。
至って質素だが、美味い。
さすが式神の料理の腕はなかなかのものだ。
「じゃ、始めるわよ」
朝食を終えて、一息つくと、いよいよ修行開始。
庭に出る。
雲ひとつない澄んだ青い空、柔らかな日差し。少しひんやりとする透き通った空気。
季節は秋、というところかな。
けれども、薄く紅い、霧のようなものが漂っている気配がする。
「アナタ、『虚の気』を感じることができるのね。訓練しやすいように『実中の虚』の世界の近くに来たんだけど、これなら大丈夫ね」
いよいよこれからか。
文中の歴史的あるいは科学的記述は全てデタラメです。