ワンキューレンの子孫を探そう
アンが遠い目をして言う。
「創世記の大昔、まさしく神戌が世界を支配していた時代ね。神戌の王城を守っていた天駆ける『女犬士』達がいたの。ワンキューレン、と呼ばれていたらしいけど。私もその子孫のひとりなの」
犬士と天使か。『犬』と『天』は、『一』と『、』の違いで似たようなものなのか。まさに原始イヌは太陽であった!ワンキューレンは、剣士でもあり、天使だったのでしょうね。アンがその末裔とは恐れ入った。だから『使命』を与えられたんだな。
「今でもその血を受け継ぐ子孫が、この世界に数匹、数人はいるみたいなの。転生する途中だったり霊化しているかもしれないけどね。神戌の時代と今では全く世界が変わったから断言はできないけど、ワンキューレンの再結成が望めなくはないわ。これからワンキューレンの仲間を探すのよ」
途方もないことをおっしゃいますが、どうやって探すの?
「世界儀で探すのよ!」
アンがそう言って呪文を唱えると、大きな球体?のようなものが浮かび上がった。太極図の2つの大きな勾玉のような立体がぐるぐると回りながら、溶けあったり分離したりしている。その中では、ねじれたり膨らんだりしながら透明な雲のようなものが蠢いている。またその中に、地球のような玉のようなものが見える。どうなっているの、これは?
「これが『疑似的な5次元の世界儀』。縦横高さの3次元空間の情報に、時間軸と虚実軸の2つの次元を加えて5次元。ドッグデータから生成したのよ。神戌の時代の情報は『創世記』の最後の時点から抹消されてしまったけど」
これで仲間が探せるの?
「このままでは何がなんだかわからないでしょうね。探しやすいように時間軸を『今』、虚実軸を『実』、に設定してみるわね」
モヤモヤ、ムニュムニュしたものがなくなって、「地球儀」らしくなった。
アンが世界儀をクルクル回しながら探している。
「これでワンキューレンの末裔を探すと…あ、この赤い点はワタシ。他には…さすがに実の世界にはいないわね。。。虚実軸を『虚』にすると、霊化したり転生中の者が見えるかもしれないわ。。。あら、結構居るじゃない。それにここ、日本に固まって何匹か居るわよ!」
どれどれ、本当だ。日本列島の形をしていて、アンがズームアップすると、どうやら秋田県のあたりだ。秋田犬かな?いかにも可能性がありそうだ。
「ワンワン!」思わず声に出た。
「あら、うれしそうじゃない」
ま、生前のオレの第二の故郷だからな。行きたいな~
「じゃあ、手始めに身近なところから行きましょうか。でもその前にアナタ、訓練が必要ね」
訓練?
「虚実犬師として、最低限のイヌ並みの術を使えるようにならないと、旅ができないでしょ。明日から訓練するわよ」
文中の歴史的あるいは科学的記述は全てデタラメです。