これも何かの縁
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『♪邊辯~辯~邊辯~辯~邊辯~辯~邊辯~辯~、甫奔~奔~甫奔~奔~甫奔~奔~甫奔~奔~、邊奔~智砺凛~邊奔~智砺凛~智砺凛~智砺凛~』
三味線の節回しがじょんがら節になった。津軽三味線は見えないが、滝の中から辯~と地がうねるような低い音と、智砺凛~という空に溶けていくような澄み切った音が洞窟に響き渡る。女性はひたすら滝に打たれているだけ。誰が弾いているのだろう。見事な撥さばきだ。
『♪♪邊辯~辯~邊辯~辯~邊辯~辯~邊辯~辯~、甫奔~奔~甫奔~奔~甫奔~奔~甫奔~奔~、邊奔~智砺凛~邊奔~智砺凛~智砺凛~智砺凛~』
聞きほれていると、そのうち背後からも聞こえてきた。二重奏だ。振り向くと、アンが滝からの音と一糸乱れぬ撥さばきで津軽三味線を合わせている。いつの間に…
『♪♪智砺魯砺智砺魯莉智砺魯砺智砺魯莉智莉智莉智莉智莉智莉智莉智莉智莉舎利舎利舎利舎利舎利舎利舎利舎利』
おーっ、速弾きのパッセージでも完璧なデュオではないか。地と空の響きが溶けあうようにいつまでも続く。
『♪♪智砺魯砺智砺魯莉智砺魯砺智砺魯莉舎利舎利華利華利幾利幾利胡利胡利、邊辯~辯~辯~辯~』
クライマックス、そして静寂が訪れた。滝の音が、余韻の中に揺らいでいる。
女性が滝の中から目を閉じたまま、静かに歩み出てきた。
「お見事な手なみね。私はポロ。あなたは」
「私はアン。古代のイヌの世界のワンキューレンの末裔としてとして転生を繰り返してきたの」
「話が早いわね。私もワンキューレンの末裔の元イヌよ」
「あなたの親は」
「よくぞ聞いてくださいました。それでは私の母と三味線の涙の因縁、とくと物語しましょうぞ」
『♪邊辯~』
ちょっと芝居がかっているけど、いいだろう。
「母は大館市で生まれた忠犬八公の妹のバチ。母はワンキューレンの血を引く叔父同様に名犬の誉れが高かったのだけれど、村人に『バチ当たりなイヌ』というあらぬ噂を立てられて、津軽三味線の皮にされてしまった。秋田犬の雌の皮は津軽三味線の最高級品用だから。さすがに母は霊犬だけあって、三味線の音は雨乞いの霊験まであったと聞いたわ」
『♪邊~』
「皮になった母を慕い、私は盲目の瞽女になって、母の三味線を探したの。私は前世の遠い記憶から、きっと静御前の霊が持っているのではないかと信じた。東北の義経の足跡をたどる虚実の境目の長い放浪の旅の末に、義経とはぐれ盗賊の囚われの身となった静御前と出会い、ようやく三味線を見つけた」
『♪舎利舎利』
「佐藤忠信が静御前を救ってくれたので、私は静御前の代わりになって犬の足で、いち早く義経を追いかけて、静御前の姿で義経と再会したら喜んでんくれた。でもすぐに静御前が到着して、どちらが本物か争いになったので、私は静御前が弾く三味線の音色に合わせて涙ながらに本性を明かした。それで私の忠義の心に感じ入った義経から三味線を賜ったの。だからもう三味線を離すものかと、虚世界まで来たの」
『♪邊辯~』
「三味線はどこに」
「あそこの洞穴の虚世界の中よ。私は滝に打たれて母に供養を捧げながら、念で弾いていたの」
「私達、あなたのような仲間を探していたの。一緒に旅に出ない?」
津軽三味線の口三味線は難しい。細竿だったらチリトテチンで済んだのに。
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