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聖犬アンの創世記  作者: 格有紀
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ADHDの克服に挑む

「無心と気を保つのは矛盾しないわよ」


 アンが難しいことを言う。どういう意味?


「それがわからないのが、アナタの悪いところね。アナタ、前世でADHDだと診断されたでしょ。いわゆる注意力の欠陥。ようするに、今やるべきことを、そのことだけに集中して、邪念を一切捨てて、取り組めばいいのよ。それが無心に気を保つということ。アナは退屈な単純作業になると全くやる気がなくなって、ほかのことばかり考えているから、ダラダラ長い時間だけ経っていくし、間違いも多くなるのよ。それは自覚しているでしょ」


 はい、自覚しています。


「たとえ単純作業でも、それに打ち込んで集中してやればやりがいがあるし、ミスもしないのよ。それがわからないから、アナタは派遣やバイトの仕事が満足にこなせなかったの。そんな態度では虚実師なんかなれないわよ!」


 痛いところを突かれた。はい、反省します。って、本当に肝に銘じなきゃ。

 幸い、前世では、医者からストラテラという薬を処方してもらって、若干ADHDが改善したようだけど。


「薬に頼るのではなく、本気で考え方や性格、生活態度を改めないと虚実師になれないからね」


 はい、そのとおりです。転生を機に改めます。


「わかったら訓練再開よ。行くわよ」


 アンの足の気配を察知して、虚の世界の気配を感じて…

 キャイーン!


 だめだ。短時間でできるわけないじゃないか。


 またアンの足が近づいてきた。紅い空を念じる、えっとどの方向に逃げるか…

 キャイーン!


 まだまだだめだ。


「トロトロしてるからできないのよ。虚実は一体だと言ったでしょ。無心に、複数の世界を同時にイメージしなきゃだめなのっ」


 同時に、って言ったって…でもやるしかないか。

 アンの足・虚の世界・あちらの方へ…よし、集中できたぞ!


 ギャイーン!


 岩の上に堕ちた。ツメが甘かったか。

 よし、もう一度…


 ドサッツ!


 今度は樹の枝にひっかかって、堕ちた。


 「まだまだツメが甘いわね。実の世界を心の中にインプットしておくのよ」


 オレは180度を超える広い視界をもとに、素早く周辺360度をマッピングした。

 アンの足が近づく。よし、もう一度…


 ストン。


 え?こんどは芝生の上に仰向けに倒れたようだ。そうか、これなんだな。


 またアンの足が。よしっ、姿勢を保ったまま…


 フワリ、タン。


 よし今度はうまく足で着地できたようだ。


 それからアンの足を何度も、なんとか回避できるようになった。

 今度はアンの背後にまわってやろうか。


 またアンの足が。よしっ、あそこへ…


 フワリ、タン。


「やればできるじゃないの」

 アンが振り返って笑顔を向ける。


 よしよし、これだな。


 それからアンの周りを360度飛び回りながら足を完全に避けれるようになった。

 もう「犬の足を踏ミニスト」の攻撃に悩まされることはない。


「ま、これは訓練だからね。実践ではどういう状況でどういう相手が現れるかわからないけど、基本的なことをマスターすれば、あとは精進だけね」


 おー、一応、合格点をもらえたようだ。


「そこまでできれば、毎秒360回転の360度分身の術、まであと一歩よ」


 いやはや、虚実の移動から分身の術までいけるんだな。


「それに、虚実の世界を操れるようになったら、アナタ、吠えて波動砲を出す、という攻撃術もできるようになるわ。これは冒険の途中でマスターしましょうね」


 えーっつ、そんなこともできるようになるの?イヌに波動砲だ。


「準備体操が終わったから、今からエドンの東へ出発するわよ」


 いきなりかよ。今晩はディナーがないの?

 コメント、評価よろしくお願いします。大歓迎です!!


 ADHDは発達障害の一種です。作者自身、そう診断され、治療を受けていますが、どんなものかお知りになりたい方は、Webで検索してください。まじで、この克服は容易ではないですが。


 なお、虚実と陰陽はまったく違います。陰陽が正負・裏表だとすれば、ここでいう虚空間とは、虚時間も含めたもので、三次元プラス時間軸の四次元の特定の座標における法線ベクトルの終点の、虚軸上の座標に相当するものです。ガウスの複素数極座標を五次元に展開したものを想像してください(といっても無茶ですね)。


 もちろん、記述されている科学的・歴史的・哲学的風な根拠はデタラメです。

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