一歩目:つながる前に
今日も暇。明日も暇。きっと明後日だって暇だろうなぁ。
ただ、何もしないでこうやって香りのいい芝生に寝転がり、アオゾラを仰げばきっと時間は過ぎるはず。
瞳を閉じればみえるはずの大好きな人も、もう消えかけちゃってるんだよ。
なんて寂しい人間なんだろうね。
『竹内、次の時間までにこれ30枚コピー頼めるか?』
「はい。分かりました、先生。」
先生うけも良し。
『まーた、お前学年一位かよ。』「はは、そう僻むなって。」
成績優秀。
『竹内く〜ん』『キャー!柚希〜こっち向いて〜』
異性からのうけも良し。
『竹内、ここどうやって解くんだ?』『柚希、飯いくぞ。』
もちろん同性からのうけもいい。
ただただ、人から好かれる性格を作ってきた。
マリオネットのような僕。
壊れるまで、定められた舞台で決められている物語を演じる。
壊れたら、僕はどこへ行くんだろう?
『ね〜、柚希。最近流れてる噂知ってる?』
放課後、隣の席の女子が話しかけてきた。
はっきり言ってこういう女は苦手だ。厚い化粧。つけすぎの香水。
しまいには性格ブスときた。
しかし・・・聞いてみる価値はあるか?
まだ耳にしていないその噂。まぁ、くだらないことなんだろうけどな。
「ん?きいたことないな。」
いつもの他人へと使う笑顔で聞き返してみた。
もうあたりがオレンジ色に染まっていて、素直に綺麗だなとおもった。
『珈琲店こねこや。っていう珈琲店が現れるんだって。でもそれは、何か願い事が無いと入れないし見えないらしいよ。』
「へー、不思議な店だね。でも、俺は自分の目で見たものしか信じないタチだから。・・教えてくれてありがとうな。」
そう言えば、顔を赤くしながら女は教室を出て行った。
にしても、だ。
そんな気前のいい店があるかよ。
そんな店があったら今頃、世界各地どこを探しても泣いてる子どもはいないだろうな。
俺はこの世界が嫌いだ。
世界、というよりも 大人 というものが嫌いだ。
自分の都合で子どもを利用する。
俺には悪魔としか見えないね。
泣いてる子どもを目の前にして、酒だ・食いもんだ、宴だ。
まったくふざけてる。
もし、その店が本当にあるとしたなら
俺の願いは、世界の泣いてる子どもを笑わせてくれ
ただ、それだけだ。
とあるカントリー風なカフェに、4人の男がいた。
そんな場所に男が4人とはなんとも言いがたいが、4人とも世に言うイケてるメンズ・・・イケメンなのである。
その中で、一番若そうな男が泣き言のように言った。
「てーんちょ。まじで次、従業員増やさねーと本当に売り上げ・・利益があがらないっすよ?」
名を、葉成 涙という。
ブロンドのくせ毛にエメラルドグリーンの瞳で、いわゆる王子様的容貌。
・・・断っておくが、彼に王子様的性格は微塵たりともない。
笑いをもらしたのは阿昼 颯太
「そーそー。俺らじゃもう、手ぇいっぱいいっぱい。お手上げーってね。」
オレンジに近い茶に染めた長めの髪を後ろに尻尾のように結んでいる。
この中で一番自由人だと思われる人物である。
最年長の租宇 芭酉は苦笑い。
「・・笑い事じゃないぞ颯太。店長、いい加減に見た目だけで店員を増やすのは辞めてください。」
落ち着いた茶色の髪に黒い瞳。
一番のまとめ役である。
「まー。怒らない怒らない。怒ると禿げるよ〜。」
「何で、俺のほうを見ながら言うんですかね?」
最年長だし?と店長の白さんは言った。
確かに芭酉さんは最年長だけど・・白さん、あなたより若いっす。
あぁぁ、芭酉さんの眉間の皺が増えてる。
「でも、白さん。本当にまずいよ?人員不足は。どうすんのさ?」
俺の方に腕を置きながら、だるそうに颯太さんが言うと、
白さん・・・正確に言うと、芭酉さんにサソリ固めされてる白さんの首がこちらを向いた。
こういうとき、颯太さんはしっかりしてるからいい。だるそうなのは気になるが・・・
いつもは、8時に起きろって言ってるのに余裕で10時に起きるし。
すぐ人をからかうしで、なんていうんだろ?むかつく先輩っす。けど見直すつもりですね。
「そーの話なんだけどね、ちょっくら見目麗しい殿方を見つけましてね〜うふふふふふ〜。」
・・・ぶっちゃけ、白さんはオカマだとおもう。
この店内といい、何で手作り人形でうまってるんだ。
「・・白さん、貴方は・・・いつになったらその男癖が直るんでしょうね?」
と、後ろから芭酉さんに痛々しい棘をさされてました。
これが、俺らの珈琲店こねこやの日常だったから、あまりにも普通な楽しい時間だったから。
少しずつ変わってく何かに気づかなかったのかもしれない。




