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 熱は2日ほど続いておさまった。

風邪をひいたというより、慣れない環境に体が馴染めなかったのかもしれない。さて、2日ぶりのお仕事だ。いつものようにニワトリの鳴き声を聞いて起きる。駐在さんのおさがりであるセーラー服に袖を通して、髪をふたつに結ぶ。駐在さんと2人で食べる朝食を用意して、パトロールが終わって帰ってきた駐在さんとそれを食べる。そしてお皿を片付けたら、わたしは表に出て立て看板を立てる。


「よう」

「セイくん、おはよう」



 立て看板を出し終えたところに声をかけられた。漁師の息子、セイくんだ。わたしと同じ年頃なのでセイくんと話すのは楽しい。セイくんはぶっきらぼうだけど正義感の強い優しい男の子だ。



「もういいのかよ」

「熱のこと?うん、大丈夫、心配かけてごめんね」

「ふうん、まあ、元気そうだしよかった」



 お父さんと話すときは怒鳴っていることが多いけれど、わたしにはまだ一度も怒鳴ったことは無い。ただあまり笑顔は見せてくれない。



「ん、ぶふっ」



 と思ったらセイくんはいきなり笑った。な、なんで笑ったの?不思議に思ってるとセイくんはわたしの方へ手を伸ばす。頭を触られた。



「お前ねぐせついてる、アホ毛みてえ」

「えっうそ、直したと思ったのにっ」


 慌てて頭に手をやると、わたしの頭を触っていたセイくんの手とぶつかった。セイくんの手はばっとひっこめられた。痛かったかな?それにしてもがんこなねぐせだったらしい、ちゃんと直したと思ったのにまたはねてたのかなあ。えっもしかして朝ご飯の時にもはねてた?駐在さんにも見られてた?


「セイくん教えてくれてありがとう!またね!」

「あ、おい」



 は、はやくねぐせを直さなくちゃと思ったわたしはセイくんに別れを告げて交番の中へ駆け込んだ。



 中へ駆け込むと、駐在さんが驚いた顔をした。


「どうした、頭を押さえて、痛いのか?」



 驚いた顔の駐在さんは見当違いのことを言う。



「あの、恥を忍んで聞くんですけど、わたし朝ご飯のときにねぐせってついてました?」

「朝飯のとき?」



 わたしが恥を忍んで聞くと、駐在さんはあごに手をあてて怖い顔で考え出した。うーん、と数秒うなったあと、あっという顔をして。


「ああ、あれねぐせだったのか、あんまり見事だからわざとだと思ってたんだが違ったのか」



 悪気のない顔でそんなことを言う。駐在さん!!!!!



「直してきます!」


 言った言葉は思いのほか強くなった。八つ当たりして申し訳ないですけど、女心がわからない駐在さんも悪いんですからね!








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