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開いた門の中へ入るとそこは大きな広場になっていて、その奥にはこれまた大きな建物がそびえたっていた。
門が閉まる音を後ろに聞きながら、わたしは広場の広さと、ここからでもわかる建物の大きさに圧倒されていた。なんというか、いつか文化祭に遊びに行った金持ち私立の学校みたいだ。
門を開けてくれた若い男性が駆け寄ってくる。
「只今隊長をお呼びしますので、荷物はいつもの場所へお願いします」
「わかりました」
「ええと、お手伝いは…ゴーロさんがいらっしゃるので必要ないでしょうか?」
「あはは、そうですね」
若い男性がちらりと荷台の後ろに居るゴーロさんを見ると、ゴーロさんはにかっと笑った。ただしそれは慣れない人間にとってはやはり怖い。たぶんこの若いお兄さんもまだ慣れていないんだろうな、ひってなったのがわたしでもわかりましたお兄さん。それからお兄さんは、では失礼しますと言ってから去って行った。
荷車はアルちゃんの指示により大きな建物の脇にあった、倉庫のような場所へと運ぶことになった。そこでしばらく待っていると、遠くの方から一人の男性が歩いてくるのが見えた。だんだんと近づいてくると、駐在さんよりも年上だろうな、と思える男性であるのがわかった。その正体はアルちゃんが男性に呼びかけた言葉で発覚する。
「叔父さま」
「アル、今回もご苦労様」
なんと、この丸メガネの似合う紳士はアルちゃんの叔父さまなのだという。アルちゃんの叔父さんってセラさんとお知り合いだっていう、あの人だよね。
紳士はアルちゃんと二言三言会話を交わすと、わたしの方を見た。それから柔らかく微笑んだ。
「アルのお友達だね?初めまして」
「は、初めまして!」
その柔らかな微笑みはわたしの周りに居ないタイプで、思わず緊張してしまう。もちろんアルちゃんを除けばの話だけれど。若くは無い、けれど老けているという印象ではなく、まさに壮齢といった印象を受ける。
「紹介しますね、アカネちゃん、こちら私の父方の叔父で騎士団の隊長を務めてらっしゃいます、アルベルト・アイザックさんです、叔父さま、こちら友達のアカネちゃんです、今日は荷物を運ぶのを手伝ってくれたんです」
「ついでに王都観光もするんだよな」
ゴーロさんの入れたちゃちゃにアルベルトさんは笑った。ぜひ楽しんで、と笑うアルベルトさんはやはり紳士だった。そんなアルベルトさんの様子にわたしの緊張もほぐれていって、つい口が軽くなってしまう。
「なんだかアルベルトさんとアルちゃんってそっくりですね、名前も雰囲気も」
「ああ、それは昔からよく言われるんだ、ね、アル」
「はい」
叔父と姪という関係の2人はよく似ている。例えば名前や、丸いメガネがよく似合っているところ。それから笑ったときの顔。笑いあう様子は親子のような、年の離れた兄妹のような印象を受ける。
「叔父さまも私も愛称がアルなので、親戚が集まった時なんかは私がリトルアルって呼ばれたりしたんですよね」
「そうそう、それで小さいころはあまりに僕になつくものだからアルのお父さんがすねたりしてね」
「そんなこともありましたね」
2人の微笑ましいエピソードにわたしも笑う。そういえば、わたしも漁師のおじさんになついてお父さんがすねたことあったっけ。
「騎士団にアルを連れて行ったこともあったね、そこで僕がリトルアルだと紹介すると皆がリトルと呼ぶようになったっけ」
「今でもみなさん私のことをリトルと呼ぶんですよ」
「はは、そうだったね」
アルちゃんの主張に、アルベルトさんは笑ってゴーロさんの方を見た。そっか、ゴーロさんがアルちゃんを呼んでいた、リトル、とはそういう意味があったんだ。
「さて、王都観光するのならあまり話し込んでちゃいけないね」
「あ、気を遣わせてすみません叔父さま」
「いいや、じゃあ門まで送ろうか、ゴーロ、荷物は頼んだよ」
「へい隊長」
アルベルトさんがそう言ってくれたのでご厚意に甘えて門まで送ってもらうことになる。わたしたちはゴーロさんに会釈をしてから、先導をつとめるアルベルトさんの後を追っていく。道中、アルベルトさんが、やっぱりイルミネーションを見に来たのかなと問いかけてきたので、はいと答えるとまたあの柔らかな微笑みを見せてくれた。
「さあ着いた、それじゃあアル、それにアカネさん」
「は、はいっ」
わたしの周りに居ないタイプの微笑みに、慣れてはきたと思ったけれどやはり名前を呼ばれると緊張してしまう。
「ぜひ王都を楽しんで、そしてまたアルと一緒に遊びに来てね」
「はい、ぜひ」
アルベルトさんは最後に握手を求めてくれた。それは騎士団の隊長としてではなく、アルちゃんの叔父さんとしてだった。アルベルトさんがそうわたしに告げた時、少し緊張がほぐれた気がして、わたしは笑顔で握手に応じることが出来た。
それからアルベルトさんに失礼しますとあいさつをしてから、わたしたちは小さな扉を開けてくぐり門の外へ出た。
「ではアカネちゃん!」
外へ出るやいなや、アルちゃんが勢いよくわたしの名前を呼んだ。そしてやや興奮気味にこう言った。
「さっそくモーニングを楽しみに行こう!」
ところで、わたしはしばしば他人の感情に影響されやすい。
「うん行こうアルちゃん!わたし楽しみだよ!」
「私も!」
アルちゃんに負けず劣らずわたしもやや興奮気味にアルちゃんの手を取り、お互いにキャアキャアはしゃぐ。わたしたちの王都観光はこれからだ!




