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わたしがこの町に来てここの月め、年の瀬も迫るころになった。
一週間が過ぎたころ、カイルさんからわたし宛に絵はがきが、駐在さん宛に手紙が届いた。わたしと駐在さんはそれを暖炉の前に座って見ていた。
絵はがきはきらびやかな光であふれている。キレイなイルミネーションだなあ。どこの風景だろうと思って駐在さんに聞くと、王都のものだと教えてくれた。なんでも年の瀬が迫るとひと月かけて王都がだんだんときらびやかに飾り付けられ、年を越す瞬間にピークを迎えるのだそう。そしてそのきらびやかな光は年を越した瞬間、一斉に消灯され、それから夜明けまでろうそくの光だけで過ごし、厳かに新年を迎えるのだという。
「なんだかステキですね」
「そのためにこの月だけは王都で過ごすような家族もいるからな、この時期王都は賑わうんだ」
この絵はがきを送ってきたということは、その賑わいの中にカイルさんも居るんだろうかと考えたけれどたぶん居ないと思う。きっとどこかの海で海を独り占めしながら年を越すんだろう。ああ、なんだかそれもステキだなあ。
絵はがきの裏面には、宛名の下に一言、ごめんねというメッセージが書かれていた。ほんと軽いなあ。
駐在さんはカイルさんからの手紙を読んでいた。その顔はだんだんと怖くなっていく。駐在さんは最後に呆れたような溜息をつくと、手紙を封筒へ戻して暖炉へ放り込んだ。
「わ、燃やしちゃうんですか?」
「海賊は送った手紙は燃やしてほしい派なんだ」
駐在さんは怖い顔のままそう言った。そうだったのかあ、じゃあこの絵はがきも燃やしちゃったほうがいいのかな?と思って駐在さんに聞いたら、それはとっておけと言われた。よくわからないけれど駐在さんがそう言うなら。それにこのキレイなイルミネーションはまだ眺めていたい。本当にキレイだなあ。わたしは念のため駐在さんに確認をとった。これをアルちゃんに見せてもいいかと。駐在さんは、誰に見せてもいいと言ってくれた。
後日アルちゃんのおうちにお邪魔したとき、わたしはその絵はがきを見せた。
「わあ、キレイ」
「でしょ?」
アルちゃんはこれが王都のイルミネーションであることは知っていた。わたしが言う前に、王都のだよね、とアルちゃんが言ったから。いやむしろ、アルちゃんは知っているどころではないようだった。
「これは去年のかな、やっぱり常に新しいのをポストカードにしてるんだあ」
「え、わかるの?」
なんとアルちゃんはいつの年のイルミネーションかもわかるらしい。
「うん、だって毎年師匠が作ってるからね」
「えっセラさんが作ってるんだ」
アルちゃんが教えてくれたのは知らない事実だった。アルちゃんは目を輝かせる。
「そうなの!普段師匠は魔法製品を作るのは機械任せなんだけど、これだけは毎年部品から全部手作りするの!だから私にとっても師匠の手作業を見るまたとないチャンスでね!」
「そ、そうなんだ」
アルちゃんは両手の拳を握りしめて興奮した様子だ。もしかして、セラさんが魔法技師として有名な理由ってこれなのかな。
「えっと、じゃあこれも魔法製品なんだね」
「うん!この光はね、魔法の光なんだよ」
わたしが聞くと、アルちゃんは拳を開いてイルミネーションの光部分を指差した。拳を解いたせいかアルちゃんは少し落ち着いた様子、よかった。
「普段は空中を漂ってるだけで姿かたちの見えない魔法を集めて光に変換するの、魔法の集め具合とか魔法の質によって光は変わるから、七色に変化するイルミネーションが楽しめるんだよ」
「へえ、だからひとつひとつの色が違うんだ」
「私もいつか作れたらなあ」
そう言ってアルちゃんはうっとりと絵はがきを眺めた。わたしもいつかアルちゃんの作ったイルミネーションを見てみたい、そう伝えるとアルちゃんはとても嬉しそうに笑ってくれた。
「アルちゃんはこのイルミネーション、生で見たことあるの?」
「うん!初めて見たのは小さい時でね、とってもキレイだったの、夢の世界を見てるようだった」
悩ましげに両の手を組んでうっとりとするアルちゃんは今でも夢の世界を見ているようだった。やっぱり写真で見るのとじゃ違うんだなあ、いいなあ。
「わたしも見たいな」
「駐在さんに頼んでみたらどう?」
「うーん、駐在さんはお休みが無いから」
アルちゃんの提案はわたしも考えたけれど、お休みの無い駐在さんに無理を言って王都へ連れて行ってもらうことはできない。かといって一人で初めての土地に行くのは絶対に無理だし。
「うーんそっかあ、…あ!」
「えっ?」
突然アルちゃんがひらめいた!というように声をあげる。
「ねえアカネちゃん、行けるよ、王都!」
それからずいっとわたしの方へ迫ってやや興奮気味にそう言った。




