表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/30

公園の待ち人9


 春の匂いがする風だというのに、真冬のような格好をしている。厚手セーターに、厚手の手袋、厚手のマフラーに厚手のニット帽。一言で言えば……ものすごく怪しい。


 そして手には、草花が握られていた。近くで摘んできたのだろうか。花はまだ生き生きしている。これは冬にしか咲かないマルギッタ。今の時期には非常に珍しい。たしか花言葉は……



 ――来世の初恋。



「その花……」


「あぁ、これかい? この花は、君にだよ」



 ボケてるの? 私じゃなくて桜の木に添えている。


 以前に添えられていたマルギッタをどけて新しく添える姿は、なんというか……可哀想に見えた。私もいずれこんな風にボ──いや認知症になってしまうのかと思えば残念でならない。


 そもそも見知らぬ私にプレゼントする時点でおかしくない? 身近な誰かと勘違いしているんじゃないの? そう考えたら、なんだか放っておけないんだけど。



「少しなら、お喋り付き合ってあげてもいいよ」


「それはありがたい。今日もいっぱいお話しようか、加奈子」



 ――ぇ、なんでこの人、私の名前を……?



「君は、毎日同じ顔をするんだね。そんなに怯えないで」



 毎日……? あぁ、そうか。きっと同名の人がいるんだな。私はこのおじいさんを見た事がないし。


 しわだらけの顔を緩ませ、私に向って優しく微笑んでくれる。


 もう老い先短い人。私を誰かと勘違いして、このおじいさんが幸せに人生を終える事が出来るのなら、私は喜んでその役を演じよう。今まで人に優しく出来なかった分、来世に行っても覚えててもらえるように彼の心を温めよう。



「そうだ、君がなかなか僕の事を覚えてくれないのなら、ここに石を積んでいこう。僕が君に会いに来る度にね。それを見たら、僕を思い出してほしい」



 まるで私の事をずいぶん昔から知っているような口ぶりなのね。



「誰と勘違いしてるの?」


「……」



 悲しげな瞳で見つめてくるおじいさんに対して、私はとっさに口をつぐんだ。……やらかした。傷つけちゃったかな?



「う、ウソウソ! 今の……ナシ」


「……僕には、大好きな子がいたんだ」



 おもむろに遠くを眺め、語りだす。



「ぇ?」


「もう、ずっと昔に死んでしまったけどね」



 ……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ