公園の待ち人6
「ぅ……うぁぁんッ!」
こんなの……こんなの、一年前のかなみんだよ。意地悪な人、大嫌い。
「――なんや。もう終わり? 口で言い負かしても一銭にもならん。あんまり木偶すぎてもツマラんなぁ」
「殺してもいいのよね?」
「殺れるもんならな」
怖くて悔しくて、かなみんの胸の中で大泣きしたら鼻水くっつけてる事に気がついた。ナイショにしておこう。そんな時、偶然か必然か通信が入ってくる。
『夏那美、葉月、今どこにいる? 弘前には着いたのか? 進捗状況を伝えてくれ』
「……もうとっくに到着しとります」
みどりんがピアス型の通信機に手を当てて喋っている。大人しい、いつものみどりん……。まさか、西嶋さんや報道記者さんたちの前だけ猫かぶってるの?
『そうか。報告が遅かったから、なにかあったかと思っていたぞ』
「まぁ、ね。ちょっとしたモメ事よ。いつもの言葉遊び」
『夏那美、お前な……。お前の口は凶器なんだから、ちょっとは葉月を見習えよ?』
かなみんがイラついてる。眉間をぴくぴく痙攣させながらみどりんを睨んで、『そんなの分かってるわよ』と震える声で返答していた。
そうだ。泣いてる場合じゃない。これから出てくる敵は、あの大場のおじいちゃんでも浄化できなかったEsなんだ。早いところ、このBlue eyeで……
『その付近にBlue eyeの目撃情報が出ている。その他にも所属不明の人物が二人。充分に警戒しながら任務を遂行してくれ』
情報入手早すぎだよ。そんな事言われたらBlue eye乗れないし。その『所属不明の人物』っていうのが、かなみんとみどりんなのは口が裂けても言えない。たぶん同じニュースを本部の誰かが見てたんだろうなぁ。この機体を与えてくれた凛ちゃん、今頃どんな顔してるのかな。やっぱり激おこ?
「麻衣さんがエースなのは、ちょっと不服です。今回の一件、Esを浄化できた者がエースになるっていうのはどうでしょう?」
突然みどりんが変な事を口走った。私は別にいいけど、凛ちゃんがどう出るか。
『どうした? 会長が決めた事だが、そんなに不服か?』
「えぇ。一番強い者がエースになるべき。私は、そう思っとります」
『……そうか。そしたら、夏那美をエースに推すつもりか?』
「いえ、ですんで、今回のこの一件、条件が厳しすぎやと思うんです。SSS級のEs相手に一人ずつ戦い、勝利した者がエースになるべき。私はそう思っとるんです」