公園の待ち人5
『光る、鳥……? いえ、人間のようにも……ひぃっ!』
突然、アナウンサーの悲鳴と、なにかが破壊される音とともに画面が砂嵐になって映像が途絶えている。私はなにもやってない。
『れ、霊術師です! こ、この人たちはまさか、人間国宝の……ッ!』
コックピットのハッチを開いて上空を確認すると、ヘリの扉付近に二人の影が月光に照らされ、シルエットを映し出していた。それぞれ霊具(武器)を装備してアナウンサーらしき男性を脅しているようにも見て取れる。ワンセグからは音声まで途絶えてしまった。画面は『しばらくお待ちください』という文字が現れ、落ち着く絵が当てられている。あの二人は、もしかして。
「ちょっと静かにしてくれない? 深夜に騒ぎ立てられたら迷惑なのよね」
「私たちの正体バラしたら、社会的に殺すけんね。覚悟しといて」
「い、以上! 青森放送局、弘前市上空からお伝え致しました!」
もう通信も途絶えたというのに、律義に最後まで伝えようとして逃げ帰っている。一目散という表現がピッタリな退避で恐れ入った。
「かなみーん! みどりーん!」
私は二人に大きく手を振るも、一人はなんだか絶対零度のように視線が冷たい気がする。二人が上空からフワリと降り立ってきている最中に、みどりんが珍しく静かに口を開いた。
「麻衣さん、Blue eyeは日霊保の中でも極秘中の極秘なんやろ? そんなに堂々と乗りよったら、いくら同じ特一級でも……潰すけんね?」
ゾクリと背筋が凍りついた。口元は笑っていても、目が笑ってない。目が。たとえ幻想的で透き通った綺麗な声だったとしても、本気で言われたらヘコんでしまう。
「もう、ホントにドジなんだから。麻衣はやっぱり、私がいないとダメね」
みどりんとは対照的に、私の顔を優しく胸で包み込んでくれる。一昔前までは火花を散らした間柄だったというのに、今じゃ親友の一人。愛しそうに頭を撫でてくれているその手が、ほんのりと温かかった。心は、それ以上に温かい人。
「うぅ。かなみん……」
かなみんは、戦闘が始まってしまえば猛獣と大差ない。こんなに優しく言われると泣いてしまいそうだ。いや、もう雫は頬を伝ってるんだけど。
「あー、もう。ほら、いちいち泣かんでいいけん、ステルス化して。こんなのが特一級のエースやと思うと不安で仕方なか」
「葉月、アンタの耳も遠いみたいね。私、さっきなんて言った? 『深夜に騒ぎ立てられたら迷惑なのよ』」
「特一級の中でも最弱な夏那美さんに言われても、説得力が微塵もないですー」
「喧嘩売ってんのよね、その言葉」
「アンタら二人相手にね。任務の前の肩慣らしって事で、二人同時にかかってき。おぉ、流石は特一級のエース。私と戦うためにBlue eyeを機動しとったんですね。単なるボケやとばかり思ってました」