公園の待ち人30
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赤羽麻衣らが帰った後、公園に現れる二つの影。
「ところで前々から思ってましたけど、どうして麻衣がエースなんですか?」
総司令官の西嶋恭平は、談話後、会長である黒崎凛に不思議そうに尋ねた。
「分からないか? 答えは、これだ」
桜の根元を掘り返し、彼女は一つの指輪をつまみ上げる。
「その指輪は……?」
「真咲が、今回の目標である水無月加奈子にプレゼントしたものだ。……やっぱり、思った通りだな。リングの内側を見てみろ」
そこには、『来世へ行っても、僕と一緒にいてください』という文字が刻まれてあった。
「これがどうかしたんですか?」
「まだ気付かないのか。愛する者同士が別の世界へ行ったら、来世で一緒になる事はまず不可能になるからだ」
「あー、なるほど。麻衣は、この気持ちを知ってSS級に突貫するような無茶を……」
「いや、あいつはリングの裏にこの文字が刻まれてる事すら知らなかったはず。おそらくはアタシと同じように直感で動いたんだろう」
「……麻衣が、凛さんのように? だけど凛さんのように100%当たる直感は――」
「麻衣の能力、忘れたのか? 未来予知だ」
ごくり、と固唾を飲む恭平の表情を見た上で、凛は話を続ける。
「あいつは確実にこの一年で伸びる。もしかしたら、アタシの永遠のライバル……大場真咲よりもな。それにリーダーシップをうまく取れるようになったら、向かうところ敵なしだ」
「心強いですね」
「あぁ。……もうここに用はない。帰るぞ」
鶴の一声により、西嶋恭平は日霊保本部へと足を向ける。決して表舞台には顔を出さない日霊保のトップ、黒崎凛。幼い顔と短い手足で勇ましく歩く姿が、背後の恭平を若い父親だと錯覚させる。
桜の根元に埋められたムーンストーンの指輪。
リングに刻まれた願いは、成就された。
しかしそれを証明するものは、なにもなかった。




