公園の待ち人29
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あれから、どれだけの時が経ったんだろう。無機質な機械音が延々と流れ続けている。流し尽くしたと思っていた涙が溢れ続け、もう二度と真咲に会えない気がしていた、その時。ふいに私の背後が優しく、強く包み込まれた。
「え……?」
「六十年も待たせて、本当にごめん」
その姿は、当時のままだった。
軽くはにかむ顔。懐かしい姿。それは、私が心を奪われた、あの真咲だった。
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三ヶ月後。
公園には園児たちが母の目の届く範囲ではしゃいでいる。その中央には、大きな桜の木が花弁を大きく舞き散らし、踊っている姿があった。
おじいちゃんの遺灰はそこに捲かれ、加奈子さんとの二人の時間を取り戻すかのように、ゆっくりと進んでいる。
「ふーん。あの『神に出会えば神を斬る』って言われた大庭のおじいちゃんが唯一浄化できなかった霊が、まさか愛した人の霊だったなんてね……」
岩木高校の制服姿でブランコのガードに腰かけ、無関心そうにカレーパンをもむもむと食べている真理。その隣で『ケータイ番号聞きそびれた』と泣きそうな顔して深く落ち込んでいるみどりん。かなみんを見てみると、真剣そのものの瞳で天を仰いでいる。なんというプロ意識なんだろう。あれだけの力量差を見せ付けられて、まだ戦おうっていうの?
「オムツ雲発見! 真理にオムツ履かせるべし!」
「は? ふざけんなし」
雲を見てたわけね。
「死神が霊力を解放した時、呆気なく気絶ちてまちたよねー、真理ちゃん」
そのお陰で、私がコックピットから降りれたという事は内緒にしたい。
「るせーんだよ、どけ。麻衣、帰ろ?」
「あれー? 逃げるんでちゅか? スピードが速い奴は、やられるのも速いんでちゅねー。痛っ! やったわね……!」
「麻衣の同僚だからって大目に見てりゃ、ふひはっへほほひひははっへ! ひっはっへんはへーほ!」
そして髪を引っ張りーの、頬を引っ張りーの、そこらの園児と変わらないレベルの喧嘩をし始めた。これは止めるべきか。否。もしかしたら真理も化ける可能性が大いにある。ここはひとつ、見守ってあげよう。
「おじいちゃん、お幸せにね」




