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公園の待ち人22

 ゴホッと咳き込むと同時に、鮮血が酸素マスクに飛び散った。



「真咲っ!」



 私はナースコールに手を伸ばすが――



「やめてくれ!」



 悲痛な声にて遮られてしまった。



「で、でも真咲が……!」


「せっかく、君が迎えに来てくれたんだ。もう、置いて行かれたく……ない」



 飽きもせず繰り返す咳。マスクを赤く染める血液。


 懇願する声に私は一瞬ナースコールを強く握るも、震える手を放し膝の上に乗せる。


 なんとか気を紛らわそうと、必死に言葉を探した。話題を探した。苦しんでいる彼を見ていたくなかったのかもしれない。



「真咲……ありがとね。指輪」



 私の声掛けに、彼は答えなかった。天井の一点だけを見つめ、一筋の涙をこぼしている。



「ちょっと、真咲……?」



 私だけを見ていてくれた真咲が


 私を対等に扱ってくれた真咲が


 私が初めて心を開いた人間が



「なに、勝手に死んでんのよ。返事くらい、させなさいよ……」



 私の耳に届いた声は、全然声になっていなかった。


 まだ温かい遺体を抱きしめ、強く心を寄り添わせ。


 真咲は、私の目の前から器だけ残して消失していた。てっきり死んだら一緒になれると高を括っていた私への神様からの罰なのかもしれない。



「もう一度……強く抱きしめてよ――」



 私は、真咲の心の中に咲けたのだろうか。


 少なくとも私の心の中には――ずっとずっと咲いていた。なんどでも蘇る、あの花は。




 * * * * * *


 ヘリの大気を叩き斬る音が響き渡る。今まで緊張していてなにも耳に届いてなかったけど、ちょっとは一息つけるかもしれない。だけど、なんだろう。


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