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公園の待ち人21


 真咲から貰った指輪と手紙を手に、私は病院を目指す。弘前病院といえば、この辺りで一番大きな病院。目と鼻の先だ。


 病院の敷地内に到着するなり、運よく真咲の姿を確認出来た。もしくは、彼との運命の糸を無意識のうちに引き寄せてたのか。

 しっかりと閉じられている窓。そこをすり抜けて個室へと入る。


 個室のベッドに横になって酸素マスクをつけられている真咲を見て、絶句した。彼の顔色は芳しくなく、目を開けたまま天井を見つめている。心電図は小さく脈打ち、今にも途絶えそうなほど弱々しい。



「加奈子……かい?」



 私の気配を感じ取ったのか、真咲は軽く口をほころばせ、目を細めた。



「迎えにきてやったわよ。死に損ない」



 心の震えを押し殺し、虚勢を張って私は近くにあった椅子に腰かけた。そういえば昔――こいつが熱出した時もこんな風に隣にいたっけ……。



「相変わらず、口が過ぎる人だ」


「そうね」


「赤羽くんが――僕の使者が、君を解放してくれたみたいだね」


「えぇ。アンタなんかより、よっぽど使えそうよ」


「困ったな……。僕は、まだ死ぬわけにはいかないのに……」


「――? 未練でもあるの?」


「そりゃ、あるさ。解放された今、君の未練を知ってしまったからね」


「……変態。勝手に私の心の奥底覗かないでよ」



 真咲は私から顔を背けるように窓の外を見つめる。そこには、桜の木が寂しげに立っているだけ。花を散らし、次なる季節に備えて冬眠している様子だ。



「加奈子。桜が、綺麗だね……」


「……アンタ、もしかして、目が――」



 花弁の代わりに舞っているのは、粉雪。突然失明する病気も、たしか存在した。まさかそれも発症してるの?



「僕は、一体どれだけ眠っていたんだろう。もうこんな季節なのかな」


 暖房のリモコンは、決して暑くはない気温に設定されているのに。


 だけど――



「そうだね。すっごく、綺麗だよ」



 私は、生まれて初めて嘘をついた。



「目が見えないから、そこに桜の木があるから――こうやって確かに感じる事が出来る。君の存在を」


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