公園の待ち人13
なんで? どうして私の声が届かないの? わけ分かんないよ。
「水無月加奈子ね?」
突然名前を呼ばれて素っ頓狂な声を上げてしまう。綺麗な標準語。声のした方を見ると、私と同い年くらいの少女が私に向かって歩いてきていた。真咲? とも思ったけど即座に却下。真咲は少なくとも女じゃない。
「どこからどう見てもSSS級には見えないけど……」
――? 言ってる意味が分からない。
「あの世に行ってもらうわ」
意味不な言葉には続きがあった。声も出せないほどの凄絶な波動が、一瞬にしてその人を纏う。突風がその人を中心に波紋を広げたと思った瞬間、外灯が弾け飛んでいく。リストバンドみたいな物から光の粒子をまき散らし、気がつけばいつの間にか長い長い白銀の槍が握られていた。目方およそ八十キロはありそうな豪槍を、片手で軽々と持っている。その矛先を私に向け、目にも映らぬ速さで突貫してきた。
殺される! そう思った直後、私の眼前で突然槍が弾かれ、摩擦のようなものが発生して激しい稲妻が周囲へと迸った。池の鯉はお腹を見せ、ブランコの木片は飛び散り、鉄棒は青白く発光している。
『えっ!?』
同時に漏れる声。私も、目の前の人も一体なにが起こったのかが分かっていない。一瞬私の前に、この人以外の誰かが立っていたようにも見えた。
「これだから夏那美さんは力だけのオバカサンなんですよ。見た目に騙されちゃダメって、霊術学の教科書にも載っとうやろうもん?」
上の方から別の声。人が……浮いている……? 私、悪い夢でも見てるの?
もう一人は、北極の氷を連想させる凍てついた眼差しで私を見下し、手の平で黒い炎を揺らめかせている。幻覚じゃない。熱気が伝わってくるあれは、本物の炎。だけど炎の色ってたしか三色だったはず。赤、青、白。黒い炎なんて見たことがない。
「その人の本体は私たちにも見えん。身体の前の正体不明な影が本体なんよ。そうやろ? 水無月加奈子」
「……」
* * * * * *
乗り気がしない。
私は、飛び慣れた道を歩いていた。歩く事によって、普段見過ごしていた景色を見る事が出来る。知ってはいけない事実を知る事もある。今頃、かなみんとみどりんは浄化完了して日霊保本部と福岡支部に戻っている頃なんだろう。そっと、この手紙だけ桜の木の下に添えておこう。




