公園の待ち人12
「……え」
「僕なら大丈夫。今日はもう帰るよ。病院に行ってみるから」
「わ、私も……」
「いや、大丈夫。明日もまた来るから、心配しないで」
暗くなった公園。桜の木の下で私は両頬を膝に埋めて、じいちゃんから言われた事を思い返していた。
『君の声は、誰にも届かない』
――いや、まさか。そんなはずは……
だって、私はここにいる。
抱えた足を、更にきゅっと抱きしめる。
私は、ずっとここで待ち続けている。存在しないはずなんかない。
大好きなあいつを待ってるんだ。
ふらりと立ち上がり、月が揺れる鏡に自分の姿を写す。
ほら、やっぱり私は、私なんだ。
ちゃぽんと鯉が跳ね、波紋を呼んだ水面で私の姿が歪んでいく。
でも、もしも……私が存在しないとしたら――
私は、どこに在るんだろう。
この記憶は一体なんなんだろう。
どうして、こんなに心が痛むんだろう。
もしもこの思い出が、私の創りだした幻想だったとしたら――
もしも真咲が存在しないで、明日来なかったら……?
私はなんの為に、ここにいるんだろう。
結局、一睡も出来ずに朝を迎えた。散歩でこの公園に足を運んだ人に軽く挨拶するも、完全にシカトされているかのように見向きもされない。お昼になっても、夜になっても、あいつは姿を現さない。
一体、なんど同じことを繰り返して時を過ごしたのかな。マルギッタは少し元気がない様子で風下に顔を向けている。
大丈夫。私は、ここに存在している。膝を折り、じいちゃんが積んでくれた石をつつきながら、そう言い聞かせた。少なくとも、じいちゃんだけは私を見てくれている。
「あのバカ……本当に来てくれるのかな」
マルギッタの茎を持ち、花をくるくる回しながら呟く。
とぼとぼ歩いて、池に自分の姿を映した。なんか、辛気臭い顔。笑顔出さなきゃ。ニッ、と笑ってみせるけど、すぐに沈んだ顔になる。
怖い。公園を素通りしていった他人のように、真咲にも気付いてもらえないんじゃないの……?




