公園の待ち人11
ただ、そんな気がするだけ。
「ここ、いいかな?」
声のした方を見ると、見知らぬジジイが突っ立っている。
温かい風が吹いているというのに、厚手のセーターに厚手の手袋、厚手のマフラーに厚手のニット帽。そして手には冬にしか咲かないマルギッタの花。
「くたばれ、って言ったらどうする?」
「またそうやってイジメる……」
初対面なはずなのに、懐かしい人を思い出した。十年前にここで約束を交わした、あのバカ……大庭真咲を。
一体どれだけ待ちわびたんだろう。
十年前のあの言葉……本気になんてしていない。その結果が分かるのが明日だ。
そんな幼馴染のクソ野郎にこのおじいさんは雰囲気が似ていて、つい「座んないの?」と言ってしまう。
「今日来た証は、約束通りここに置いておくよ」
そう言って、薄い石の上にまた薄い石を乗せる。この石って、そのためにあったの?
おじいさんは、私の事を全て知っていた。好きな曲。好きな食べ物。好きなスポーツ……。ストーカー? とも思って一瞬顔を強張らせたけど、どうやらそんな様子でもない。そして気がつけば、和気藹藹と喋っていた。
「――のよね。そういえば、じいちゃんの奥さんって、どんな人なの?」
「ん? また急だね。……僕に妻はいないよ。心から好きな人ならいたけど」
「ふぅん。逃げられたんだ?」
「そう……なるかな。手が届きそうで、決して手が届かない場所」
言っている意味が分からないけど、相槌して無理やり納得する。んー……なんか、難しい話なんだね。
なんの前触れもなく、おじいさんは野太い咳をした。あまりに突然の大きな咳で、隣に座っている私のお尻が軽く浮く。そして連続してゴホンゴホンと息を詰まらせていた。
「だ、大丈夫? アンタそろそろ死ぬんじゃない……?」
「……かもね」
「ち、え――? 吐血してんじゃない!」
ベットリと大量の鮮血がついた手袋を見て、私は絶叫に近い声を上げていた。
「誰か、誰か助けて! じいちゃんが……じいちゃんを病院に……!」
公園を横切るベビーカーを押した女性に、サッカーボールを持って遊びに来た男の子に、散歩中の猫に叫ぶけど、
「無駄だよ。君の声は、誰にも届かない」




