公園の待ち人10
「君を見ていたら、その子を思い出すんだ。気が荒くて、短気で、横暴で、高飛車で――」
私を見てそんなの思い出さないでよ。私が気が荒くて短気で横暴で高飛車みたいじゃない。
「だけど、僕にとっては……たったひとつの太陽だった」
なぜか、私の胸が高鳴った。私に言われたわけじゃないのに。おじいさんの横顔は、あのバカに見えた。情けなくて弱虫で泣き虫で……だけど、とっても優しかったあのバカに。
その日は、とても楽しい一日だった。
夜になり市営住宅の光で桜がライトアップされ、桜をテーマにおじいちゃんが適当な曲を作って私が歌詞をつける。人と話すのがこんなに楽しいなんて、思ってもいなかった。心を温めてあげようと思った私が、逆に温められるなんて。
強い風が吹き、桜の花びらが舞う。
「綺麗ね」
「そうだね」
嗚咽混じりの相槌に、私は意味が分からずびっくりして顔を見た。
「どうしたの?」
「……いや、なんでもないよ。さて、僕は帰ろうかな」
「そっか。……もう帰っちゃうんだ」
「少しは老人を労りなさい」
「はぁーい」
いたずらっぽく言う声に、私は軽く笑って返事をする。
「ひとつだけ、お願いがあるの。……桜を見たら、私を思い出してほしいんだ──」
「もちろん。必ず」
桜の木の下に薄くて大きな石を置き、おじいちゃんは重い腰を上げた。ばいばい、と手を振ると、ばいばい、と返してくれる。
明日も、また来てくれるかな。小さくなっていく背中を見送り、心にぽっかり穴が開いたような強烈な喪失感を覚えながら、私はそんな事を思っていた。はっきり言って、この感覚は異常だと思う。ただ、今日初めて知り合った人が帰っただけなのに。そして別れ際に、なぜあんな事を言ったのかも分からなかった。
私が身を起こすと、すでに太陽は真上に昇り昼を告げていた。
「ン?」
私の傍らにはマルギッタと、その隣に薄い石が置かれている。なんでこんな所に……?
これは一体なにに使うのだろうと思わず首を捻ってしまう。
そういえば、これは大切な約束の証だったような気がする。だけど、まったく記憶にない。




